会社の設立準備を進める中で、定款に記載する「事業目的」の書き方にお悩みではありませんか?
事業目的は、単に会社設立登記に必要なだけでなく、金融機関からの融資や取引先からの信頼性、将来の許認可取得にも大きく影響する、会社の未来を左右する重要な要素です。
この記事では、登記でつまずかないための基本ルールから、具体的な書き方の5ステップ、IT・建設・飲食業など業種別の豊富な記載例まで、専門家が分かりやすく解説します。
NG例や設立後の変更方法も網羅しており、この記事だけで事業目的のすべてがわかります。
事業目的の書き方が重要な理由
会社の事業目的は、単に「何をする会社か」を示すだけではありません。
会社設立の登記手続きはもちろんのこと、会社の社会的信用や資金調達、特定の事業を行うために必要な許認可の取得にも直結する、まさに会社の根幹をなす重要な項目です。
安易に決めてしまうと、後々の事業展開で思わぬ足かせとなる可能性があります。
ここでは、事業目的の書き方がなぜそれほどまでに重要なのか、3つの具体的な理由を掘り下げて解説します。
会社設立登記に必須の項目
事業目的は、会社の憲法ともいえる「定款」に必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」の一つです。
会社法で定められており、この記載がなければ定款そのものが無効と判断されます。
そして、定款が無効であれば、法務局での会社設立登記の申請が受理されません。
つまり、事業目的を適切に定めなければ、会社を設立すること自体ができないのです。
これは、株式会社、合同会社など、すべての会社形態に共通する大原則です。
◆ 主な絶対的記載事項(株式会社の場合)
- 目的
- 商号
- 本店の所在地
- 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額
- 発起人の氏名又は名称及び住所
会社の信頼性や融資審査に影響
事業目的は、会社の「顔」として、外部からの信頼性を大きく左右します。
取引先や顧客は、登記事項証明書(登記簿謄本)に記載された事業目的を見て、「この会社がどのような事業を行っているのか」を公式に確認します。
事業目的が不明確であったり、実態とそぐわない内容であったりすると、ビジネスの機会を失うことにもなりかねません。
特に重要なのが、金融機関からの融資審査への影響です。
日本政策金融公庫や銀行などの金融機関は、融資を検討する際に必ず事業目的を確認します。
提出された事業計画書の内容と、登記された事業目的に一貫性がない場合、事業の実現性や計画性に疑問符が付き、融資審査で著しく不利になる可能性があります。
例えば、ITシステムの開発で融資を受けたいのに、事業目的に「飲食店の経営」としか書かれていなければ、融資担当者は事業の本気度を疑うでしょう。
事業目的は、あなたの事業の信頼性を担保する重要な証明書でもあるのです。
許認可の取得に不可欠
特定の事業を始めるには、国や地方公共団体から「許認可」を得る必要があります。
例えば、建設業、不動産業、リサイクルショップ(古物商)、飲食店、人材紹介業などがこれに該当します。
そして、これらの許認可を申請する大前提として、定款および登記事項証明書の事業目的に、許認可の対象となる事業内容が明確に記載されていることが絶対条件となります。
例えば、「建設業許可」を取得したいのであれば、事業目的に「土木工事業」や「建築工事業」といった具体的な文言がなければ、申請自体ができません。
将来的に許認可が必要となる事業を展開する可能性がある場合は、会社設立の段階でその事業目的を盛り込んでおくことが、スムーズな事業拡大の鍵となります。
事業目的の書き方における4つの基本ルール

会社の事業目的は、定款や登記簿謄本に記載される非常に重要な項目です。
自由に設定できるように思えますが、実は会社法などを基にした4つの基本ルールが存在します。
これらのルールを守らないと、法務局での登記申請が受理されない可能性があります。
会社の顔となる事業目的を正しく設定するために、まずは基本の4ルールをしっかりと押さえましょう。
ルール1 適法性
事業目的の第一のルールは「適法性」です。
これは、事業内容が法律に違反していないこと、そして公序良俗に反していないことを意味します。
当たり前のことですが、犯罪行為を事業目的にすることは絶対にできません。
また、法律で特定の資格や免許を持つ者しか行えないと定められている事業(弁護士、公認会計士、医師など)を、資格がないのに事業目的として記載することも適法性に反します。
事業を始める前に、その事業が法律や条例に抵触しないか、許認可が必要な場合はその要件を満たしているかを必ず確認する必要があります。
適法性を満たしていない事業目的は、登記申請の段階で法務局の登記官に修正を求められることになります。
ルール2 営利性
株式会社や合同会社といった会社形態は、事業を通じて利益を上げ、それを株主などの出資者に分配することを目的とする「営利法人」です。
そのため、事業目的にも「営利性」が求められます。
具体的には、「ボランティア活動」や「寄付活動」といった非営利活動のみを事業目的として登記することはできません。
もちろん、企業の社会的責任(CSR)の一環として社会貢献活動を行うことは可能ですが、あくまでも利益を追求する事業が主軸である必要があります。
事業目的は、会社が収益を得るための活動であることを明確に示さなければなりません。
ルール3 明確性
事業目的は、誰が読んでもその事業内容を客観的に理解できる「明確性」が求められます。
一般的でない専門用語や、意味が曖昧な造語、抽象的すぎる表現は避けるべきです。
これは、登記官だけでなく、金融機関や取引先といった第三者が登記簿謄本を見た際に、その会社が何をしているのかを正確に把握できるようにするためです。
例えば、「未来を創造する事業」や「コミュニケーションビジネス」といった表現では、具体的に何を行うのかが全く分かりません。
登記官が判断に迷うような曖昧な表現は、補正指示の対象となる可能性が高いため、日本語の辞書に載っているような一般的で平易な言葉を選ぶことが重要です。
| 評価 | 避けるべき表現(NG例) | 推奨される表現(OK例) |
|---|---|---|
| 抽象的な表現 | 各種コンサルティング業務 | 企業の経営戦略及びマーケティングに関するコンサルティング |
| 意味が広い表現 | サービス業 | 飲食店の経営、企画及び運営 |
| 造語・曖昧な表現 | クリエイティブソリューションの提供 | ウェブサイト、ウェブコンテンツ及びデジタルコンテンツの企画、制作、配信及び販売 |
ルール4 具体性
「明確性」と似ていますが、「具体性」は事業内容をより具体的に記述することを求めるルールです。
会社の事業内容を正しく公示し、取引の安全性を確保する目的があります。
将来的に行う可能性がある事業をあらかじめ記載しておくことは可能ですが、あまりにも本業とかけ離れた事業を多数羅列することは推奨されません。
例えば、ITコンサルティング会社が「マグロの養殖」や「航空機の製造」といった関連性のない目的を多数並べると、「この会社は一体何が本業なのか」が不明確になり、金融機関からの融資審査や新規取引先からの信用評価において、マイナスの影響を与える可能性があります。
事業目的は、現在行っている事業と、将来的に展開する蓋然性の高い事業を中心に、実態に即した内容で構成することが、会社の信頼性を高める上で非常に重要です。
5ステップで完成 事業目的の具体的な書き方

事業目的の基本ルールを理解したら、次はいよいよ実践です。
ここでは、誰でも迷わず事業目的を作成できるよう、具体的な5つのステップに分けて解説します。
この手順に沿って進めることで、登記申請で受理され、かつ将来の事業展開にも対応できる、実用的な事業目的が完成します。
ステップ1 現在行う事業を書き出す
まずは、会社を設立して「すぐに始める事業」を具体的に書き出してみましょう。
この段階では、登記用の固い言葉にこだわる必要はありません。箇条書きで、思いつくままにリストアップしていくのがポイントです。
「誰に」「何を」「どのように」提供するのかを意識すると、事業内容がより明確になります。
例えば、「ITサービス」といった漠然としたものではなく、「中小企業向けに、業務効率化のためのクラウドシステムを開発・提供する」のように、できるだけ具体的に言語化することが重要です。
この作業で洗い出した内容が、あなたの会社の事業目的の核となります。
ステップ2 将来的に展開したい事業を書き出す
次に、現時点ではまだ着手しないものの、将来的(2〜5年後程度)に展開する可能性のある事業もすべて書き出します。
会社の成長とともに事業領域が拡大することは珍しくありません。
あらかじめ将来の事業を事業目的に含めておくことで、後から事業目的を追加する手間とコストを省くことができます。
事業目的を追加・変更するには、株主総会の特別決議を経て、法務局で変更登記を行う必要があり、登録免許税として3万円の費用がかかります。
将来少しでも可能性がある事業は、設立の段階で盛り込んでおくのが賢明です。
例えば、Web制作会社であれば「Webコンサルティング事業」「インターネットメディアの運営」「オンライン教育コンテンツの企画・販売」などが考えられるでしょう。
ステップ3 類似企業の事業目的を参考にする
ゼロから適切な表現を考えるのは非常に困難です。
そこで、同業他社やあなたが目標とする企業の事業目的を参考にすることが、最も効率的で確実な方法です。
すでに登記が完了している企業の事業目的は、適法性や明確性といったルールをクリアしているため、非常に参考になります。
具体的な調査方法
類似企業の事業目的は、主に以下の方法で調査できます。
特に「登記情報提供サービス」は、有料ですが正確な情報をオンラインで簡単に入手できるためおすすめです。
| 調査方法 | 特徴 | ポイント |
|---|---|---|
| 登記情報提供サービス | 法務局が保有する登記情報をオンラインで確認できる公式サービスです。(有料:1件332円 ※2026年1月時点) | 会社の商号(名称)と本店所在地が分かれば、誰でも登記情報を閲覧できます。最も正確で信頼性が高い方法です。 |
| 国税庁 法人番号公表サイト | 日本国内の法人の法人番号、商号、本店所在地を無料で検索できます。 | このサイトで正確な商号と本店所在地を調べ、登記情報提供サービスで詳細を確認する、という流れがスムーズです。 |
| 企業の公式ウェブサイト | 「会社概要」や「IR情報」のページに事業内容が記載されていることが多いです。 | 登記された文言そのものではない場合もありますが、事業の全体像を把握するのに役立ちます。 |
複数の企業を参考にすることで、自社が目指す事業に最適な表現や、自分では思いつかなかった事業のヒントが見つかるはずです。
ただし、他社の事業目的をそのまま流用するのではなく、必ず自社の実態に合わせて取捨選択し、アレンジするようにしてください。
ステップ4 許認可が必要か確認する
書き出した事業の中に、事業を行うために行政庁からの許認可(許可・認可・届出など)が必要なものが含まれていないかを必ず確認してください。
許認可が必要な事業の場合、その許認可申請の要件として、事業目的に特定の文言を記載することが求められるケースが非常に多いからです。
例えば、中古品の買取・販売を行う「古物商」の許可を得るには、「古物営業法に基づく古物の売買」といった文言が事業目的に必要です。
同様に、建設業許可なら「建設工事の請負、設計及び監理」、有料職業紹介事業許可なら「有料職業紹介事業」といった記載が求められます。
もし必要な文言が抜けていると、許認可の申請が受理されません。
その場合、まず事業目的の変更登記を行ってから、再度許認可を申請するという二度手間と余計な費用が発生してしまいます。
許認可の要件は、事業を管轄する省庁や都道府県のウェブサイトで確認するか、行政書士などの専門家に相談することを強く推奨します。
ステップ5 最終的な文言にまとめる
最後のステップとして、これまでのステップで集めた情報を整理し、登記申請に使える最終的な文言にまとめます。
ステップ1〜4でリストアップした事業内容を、第2章で解説した「4つの基本ルール(適法性・営利性・明確性・具体性)」に照らし合わせながら、適切な表現に整えていきます。
このとき、「〜の企画、開発、製造、販売、賃貸及び輸出入」「〜に関するコンサルティング業務」といった、登記実務で一般的に使われる定型的な表現を参考にすると、スムーズにまとめることができます。
類似企業の例を参考に、自社の事業内容に合うように組み合わせましょう。
そして、事業目的の最後の項目には、必ず以下の「マジックフレーズ」と呼ばれる一文を加えてください。
- 「前各号に附帯又は関連する一切の事業」
この一文を入れておくことで、定款に具体的に記載した事業目的の周辺業務や、それに付随して発生する細かな業務(例:事業に関連するセミナーの開催、ノウハウ本の出版など)も、定款の目的の範囲内であると解釈されやすくなります。
会社の活動の自由度を確保するために、忘れずに記載しましょう。
これで、あなたの会社の事業目的は完成です。
【業種別】事業目的の書き方 記載例集

会社の事業目的は、定款や登記簿に記載する重要な情報です。
ここでは、主要な業種別に事業目的の具体的な記載例と、作成時のポイントを解説します。
自社の事業内容に近いものを参考に、将来の事業展開も見据えてカスタマイズしていきましょう。
どの業種でも、最後に「その他、前各号に附帯又は関連する一切の事業」という一文を加えておくことで、事業内容の柔軟性を確保できます。
IT・Webサービス業の記載例
IT・Webサービス業界は技術の進歩が速く、事業内容も多岐にわたります。
そのため、現在の事業だけでなく、将来的に参入する可能性のある分野も幅広く記載しておくことが重要です。
- コンピュータのソフトウェア、ハードウェアの企画、開発、設計、製造、販売及び保守
- ウェブサイト、ウェブコンテンツ及びデジタルコンテンツの企画、制作、開発、デザイン、運営及び管理
- インターネットを利用した各種情報提供サービス及び情報収集サービス
- インターネット広告の企画、制作、販売及び広告代理店業
- 企業の経営合理化及び情報化に関するコンサルティング業務
- 情報処理技術者、クリエイター等の育成及び教育事業
- 労働者派遣事業及び有料職業紹介事業
- その他、前各号に附帯又は関連する一切の事業
システム開発(SES事業を含む)やWebサイト制作、アプリ開発、DX支援、コンサルティングなど、関連する事業を網羅的に記載しておくと、後々の事業目的変更の手間を省くことができます。
コンサルティング業の記載例
コンサルティング業は、専門分野を明確にすることが信頼性につながります。
「何の専門家なのか」が第三者から見て分かるように記載しましょう。
- 企業経営全般に関するコンサルティング業務
- 財務、会計及び人事に関するコンサルティング業務
- マーケティングリサーチ及び経営情報の調査、収集、提供
- 新規事業の企画、開発及びその支援
- セミナー、講演会、研修の企画、立案、運営及び実施
- 書籍、雑誌その他印刷物の企画、執筆、出版及び販売
- 市場調査、宣伝、販売促進に関する業務
- その他、前各号に附帯又は関連する一切の事業
経営コンサルティングだけでなく、M&Aアドバイザリーや人事研修、セミナー開催、書籍の執筆なども含めておくと、事業の幅が広がった際にスムーズに対応できます。
飲食店の記載例
飲食店経営では、店内での飲食提供だけでなく、テイクアウトやデリバリー、イベント出店など、多様な収益源を確保することが一般的です。
これらの事業もあらかじめ目的に含めておきましょう。
- 飲食店の経営、企画及び運営
- 喫茶店及びバーの経営
- 弁当、惣菜、パン、菓子の製造、加工及び販売
- インターネット等を利用した通信販売及びケータリングサービス
- 食料品、清涼飲料水及び酒類の販売
- 飲食店に関するコンサルティング業務
- フランチャイズチェーンシステムによる飲食店の加盟店募集及び指導
- その他、前各号に附帯又は関連する一切の事業
将来的にオンラインストアでオリジナル商品を販売したり、ケータリングサービスを開始したりする可能性を考慮し、「通信販売」や「ケータリング」の文言を入れておくことがおすすめです。
また、酒類を提供する場合は「酒類の販売」も必須です。
建設業の記載例
建設業は、建設業法で29種類の業種が定められており、許認可(建設業許可)と密接に関連します。
許可を取得したい業種は、必ず事業目的に明記する必要があります。
- 建築工事、土木工事、大工工事、内装仕上工事その他建設工事全般の企画、設計、施工、監理及び請負
- 建築物の解体工事
- 住宅及び店舗のリフォーム及びメンテナンス
- 不動産の売買、賃貸、仲介及び管理
- 建築資材の販売及び輸出入
- 産業廃棄物の収集、運搬及び処理業
- その他、前各号に附帯又は関連する一切の事業
「建設工事」と包括的に記載するだけでなく、「建築一式工事」「内装仕上工事」のように、取得を目指す許可に対応した具体的な工事内容を列挙することが重要です。
また、リフォームや不動産管理など、関連性の高い事業も加えておくと良いでしょう。
不動産業の記載例
不動産業を営むには、宅地建物取引業の免許が必要です。
事業目的には、免許申請で求められる内容を正確に記載することが求められます。
- 不動産の売買、賃貸、仲介、斡旋及び管理
- 不動産の有効活用に関する企画、調査及びコンサルティング
- 建物の増改築、リフォーム及びリノベーション事業
- 損害保険代理業及び生命保険の募集に関する業務
- 賃貸物件の家賃保証及び集金代行業務
- 駐車場の経営及び管理
- その他、前各号に附帯又は関連する一切の事業
「不動産の売買、賃貸、仲介、管理」は必須の項目です。
それに加え、不動産オーナー向けのコンサルティングや、住宅ローンに関連して提案する機会の多い「損害保険代理業」などを入れておくと、事業機会を逃さずに済みます。
小売業・ECサイトの記載例
小売業やECサイト運営では、取り扱う商材をある程度具体的にしつつ、将来的な商材拡大にも対応できるような書き方が理想です。
中古品を扱う場合は「古物商許可」が必要になるため、その記載も忘れないようにしましょう。
- 衣料品、服飾雑貨、日用品雑貨、化粧品の企画、製造、販売及び輸出入
- 食料品、加工食品、健康食品の企画、販売及び輸出入
- インターネットを利用した通信販売業(ECサイトの運営)
- 古物営業法に基づく古物の売買
- 上記商品の卸売及び小売業
- 販売促進に関するコンサルティング業務
- その他、前各号に附帯又は関連する一切の事業
「〇〇の販売」と記載するだけでなく、「企画、製造」「輸出入」を加えることで、自社ブランドの立ち上げや海外展開にも対応できます。
また、中古品やリサイクル品を取り扱う可能性がある場合は、必ず「古物営業法に基づく古物の売買」を記載し、古物商許可の申請に備えましょう。
許認可が必要な事業と事業目的の書き方の注意点

会社を設立して特定の事業を行う際、国や地方公共団体から「許認可」を得なければならないケースがあります。この許認可が、事業目的の書き方と密接に関わってきます。
なぜなら、許認可を申請する際には、会社の定款にその事業を行うことが目的として明確に記載されていることが大前提となるからです。
定款の事業目的に記載がなければ、そもそも許認可の申請が受理されない、あるいは審査で不許可となる可能性があります。
ここでは、許認可が必要な事業の代表例と、申請を見据えた事業目的の書き方のポイントを詳しく解説します。
許認可が必要な事業の例
許認可が必要な事業は多岐にわたります。
ここでは、会社設立時に選択されることが多い業種を中心に、必要な許認可の種類と管轄行政庁の例を一覧でご紹介します。
ご自身の事業が該当しないか、必ず確認しましょう。
| 業種 | 必要な許認可(例) | 管轄行政庁(例) |
|---|---|---|
| 建設業 | 建設業許可 | 国土交通大臣または都道府県知事 |
| 不動産業 | 宅地建物取引業免許 | 国土交通大臣または都道府県知事 |
| 飲食業 | 飲食店営業許可 | 保健所 |
| リサイクル・中古品販売 | 古物商許可 | 公安委員会(窓口は警察署) |
| 人材サービス業 | 労働者派遣事業許可、有料職業紹介事業許可 | 厚生労働大臣(窓口は労働局) |
| 運送業 | 一般貨物自動車運送事業経営許可 | 地方運輸局 |
| 介護サービス事業 | 介護保険事業所指定 | 都道府県または市区町村 |
| 産業廃棄物処理業 | 産業廃棄物収集運搬業許可 | 都道府県または政令指定都市 |
| 酒類販売業 | 酒類販売業免許 | 税務署 |
※上記はあくまで一例です。事業内容によっては複数の許認可が必要になる場合や、ここに記載のない許認可が必要となる場合があります。
許認可申請を考慮した書き方のポイント
許認可をスムーズに取得するためには、事業目的の文言を戦略的に作成する必要があります。
以下のポイントを押さえて、登記でつまずかないように準備しましょう。
ポイント1:行政庁の手引きを確認し、指定の文言を入れる
許認可申請で最も重要なのは、申請先となる行政庁が求める文言が事業目的に含まれていることです。
多くの許認可では、その根拠となる法律名や、事業内容を示す特定のキーワードを目的として記載するよう、手引きなどで定められています。
例えば、古物商の許可を得たい場合、単に「中古品の売買」と記載するのではなく、「古物営業法に基づく古物商」といった文言を入れるのが確実です。
申請前に必ず管轄行政庁のウェブサイトを確認するか、直接問い合わせて、必要な文言を正確に把握しましょう。
【記載例】
- (宅地建物取引業)→「宅地建物取引業法に基づく宅地建物取引業」
- (労働者派遣事業)→「労働者派遣事業法に基づく労働者派遣事業」
- (建設業)→「建設業法に基づく建設工事の請負、設計及び監理」
ポイント2:事業内容を具体的に記述する
許認可によっては、事業の範囲をより具体的に示す必要があります。
例えば、建設業許可は29の業種に分かれており、どの業種の工事を行うのかを事業目的に明記することが望ましいです。
同様に、飲食店営業許可でも「飲食店の経営」だけでなく、「カフェの経営」「レストランの経営」のように具体的に書くことで、事業内容がより明確になります。
ポイント3:将来取得する可能性のある許認可も想定する
現時点では行わない事業でも、将来的に参入する可能性があり、かつ許認可が必要なものであれば、あらかじめ事業目的に加えておくことをお勧めします。
後から事業目的を追加するには、株主総会の特別決議や登記変更手続きが必要となり、時間と費用(登録免許税3万円)がかかるためです。
例えば、建設業を始める会社が、将来的に産業廃棄物の収集運搬も手がける可能性があるなら、「産業廃棄物収集運搬業」も目的として登記しておくと効率的です。
ポイント4:迷ったら専門家に相談する
許認可の要件は複雑で、法改正によって変更されることも少なくありません。
どの許認可が必要か、どのような文言を事業目的に記載すべきか判断に迷う場合は、必ず専門家に相談しましょう。
会社設立手続き全般は司法書士、許認可申請の専門家は行政書士が担当します。
事前に相談することで、設立後の手戻りを防ぎ、スムーズな事業開始につながります。
知っておきたい事業目的のNG例

会社の事業目的は、定款や登記簿に記載される重要な項目です。
しかし、書き方によっては法務局で登記申請が受理されなかったり、後々の事業運営で思わぬ不利益を被ったりする可能性があります。
ここでは、会社設立時に避けるべき事業目的のNG例を具体的に解説します。
これらのポイントを押さえることで、スムーズな登記と将来の事業展開に向けた盤石な基盤を築きましょう。
抽象的すぎる表現
事業目的のNG例として最も多いのが、表現が抽象的すぎるケースです。
事業目的は、誰が読んでも「この会社が何をしているのか」を具体的に理解できる必要があります。
漠然とした言葉では、登記官が事業内容を判断できず、登記申請が却下される原因となります。
また、金融機関や取引先も事業実態を把握しにくいため、信用力の低下につながる恐れがあります。
| NG例(抽象的な表現) | OK例(具体的な表現) |
|---|---|
| サービス業 | 飲食店の経営、経営コンサルティング業、ITシステムの開発・保守 |
| コンサルティング業務 | 中小企業向けの財務・会計に関するコンサルティング |
| 商業 | 紳士服及び婦人服の販売、インターネットを利用した雑貨の通信販売 |
| 各種代理店業務 | 損害保険代理店業、広告代理店業 |
上記のように、「サービス業」や「商業」といった広範すぎる言葉は避け、「何の」サービスを提供するのか、「何を」販売するのかを明確に記載することが重要です。
法律や公序良俗に反する事業
当然のことながら、法律で禁止されている行為や、社会の一般的な道徳観念に反する事業(公序良俗違反)を事業目的に掲げることはできません。
適法性と公序良俗に反する事業は、いかなる理由があっても事業目的として認められません。
具体的には、以下のような例が挙げられます。
- 賭博場の経営
- 武器、麻薬等の密輸及び販売
- 詐欺行為の代行、コンサルティング
- 各種犯罪の請負
また、弁護士法や税理士法、行政書士法などで定められている「士業」の独占業務にも注意が必要です。
資格を持たない個人や法人がこれらの業務を事業目的として掲げることは法律違反にあたるため、登記することはできません。
例えば、弁護士資格を持たない会社が「法律相談業務」や「訴訟代理」を事業目的にすることは不可能です。
目的の数が多すぎる
将来の事業展開を見据えて、考えられる事業をすべて盛り込みたくなるかもしれません。
しかし、事業目的の数が多すぎるのも問題です。
一般的に、事業目的の数は10〜15個程度に収めるのが適切とされています。
目的が数十個にも及ぶと、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。
- 会社の専門性が不明確になる:「何でも屋」という印象を与え、何の事業を主軸にしているのかが外部から分かりにくくなります。
- 融資や許認可で不利になる:金融機関の融資審査において、事業計画の具体性や実現性を疑われる一因となることがあります。また、許認可が必要な業種では、関連性のない事業目的が多いと審査に影響するケースもあります。
- 取引先の信頼を得にくい:専門性が低いと見なされ、取引先からの信用を得にくくなる可能性があります。
会社設立時には、現在すぐに行う事業と、1〜3年程度の近い将来に着手する可能性が高い事業に絞って記載するのが賢明です。
事業目的は、会社設立後でも株主総会の決議を経て変更・追加することが可能ですので、設立時にすべてを詰め込む必要はありません。
会社設立後に事業目的を変更・追加する方法

会社の状況は、設立当初から常に変化し続けます。事業の多角化や新規事業への参入、あるいは取引先や金融機関からの要請により、設立時に定めた事業目的を変更・追加する必要が出てくるケースは少なくありません。
会社設立後であっても、所定の手続きを踏むことで事業目的を柔軟に変更・追加することが可能です。
この手続きは、主に「株主総会での定款変更決議」と「法務局での変更登記申請」の2つのステップで構成されます。
ここでは、その具体的な手続きの流れと必要な費用・書類について詳しく解説します。
事業目的の変更手続きの流れ
事業目的の変更は、定款の記載事項を変更することになるため、法律に定められた手順に沿って進める必要があります。
手続きの全体像を把握し、計画的に進めましょう。
- ステップ1:株主総会での特別決議事業目的の変更は「定款変更」に該当するため、株主総会での「特別決議」が必要です。
特別決議は、普通決議よりも可決要件が厳しく設定されています。
具体的には、「議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成」を得る必要があります。合同会社の場合は、総社員の同意が必要です。
この決議内容を証明するために、必ず「株主総会議事録」を作成し、適切に保管してください。
この議事録は、後の登記申請で必須の書類となります。 - ステップ2:変更登記申請書類の作成株主総会での決議後、法務局へ提出する変更登記の申請書類を準備します。
主な必要書類は「株式会社変更登記申請書」「株主総会議事録」「株主リスト」です。
申請書には、変更後の事業目的を正確に記載します。
書き方については、この記事の前半で解説した「事業目的の書き方における4つの基本ルール(適法性、営利性、明確性、具体性)」を必ず守るようにしてください。 - ステップ3:法務局への変更登記申請書類の準備が整ったら、法務局へ変更登記の申請を行います。注意すべきは申請期限です。
株主総会で決議した日から2週間以内に、本店所在地を管轄する法務局へ申請しなければなりません。
申請方法には、法務局の窓口へ直接持参する方法、郵送する方法、そしてオンライン(G-BizIDを利用した登記・供託オンライン申請システム)で申請する方法があります。
期限を過ぎると過料(罰金)の対象となる可能性があるため、速やかに手続きを進めましょう。 - ステップ4:登記完了と登記事項証明書の取得申請後、通常1週間から2週間程度で登記が完了します。
登記が完了したら、必ず法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得し、事業目的が正しく変更されているかを確認してください。
この証明書は、許認可の申請や融資の申し込み、新たな取引先との契約時などに提出を求められる重要な書類です。
変更登記に必要な費用と書類
事業目的の変更登記には、国に納める税金(登録免許税)と、手続きに必要な書類があります。
また、司法書士などの専門家に依頼する場合は、別途報酬が発生します。
変更登記にかかる費用
| 費用項目 | 金額の目安 | 備考 |
|---|---|---|
| 登録免許税 | 30,000円 | 法務局に納める国税です。申請1件あたりの固定額となります。 |
| 司法書士への報酬 | 3万円~6万円程度 | 手続きを専門家に依頼する場合に発生します。事務所によって料金は異なります。 |
| その他実費 | 数百円~数千円程度 | 登記事項証明書の取得費用(1通600円など)や、郵送費などがかかります。 |
変更登記に必要な主な書類
ご自身で手続きを行う場合、以下の書類を準備する必要があります。
不備があると再提出を求められ、時間がかかってしまうため、慎重に作成しましょう。
| 必要書類 | 概要・注意点 |
|---|---|
| 株式会社変更登記申請書 | 法務局のWebサイトからテンプレートをダウンロードできます。 変更後の事業目的や登録免許税額(収入印紙を貼付)などを記載します。 |
| 株主総会議事録 | 事業目的の変更が株主総会の特別決議で承認されたことを証明する書類です。 議事録には、開催日時、場所、出席役員・株主、議案、決議内容などを正確に記載します。 |
| 株主リスト | 株主総会時点での株主の氏名や住所、株式数、議決権数などを記載した書類です。 株主総会議事録と合わせて提出します。 |
| 委任状 | 司法書士など代理人に手続きを依頼する場合に必要となります。 |
以上のように、事業目的の変更には法的な手続きと費用が伴います。
しかし、会社の成長や事業戦略の変化に柔軟に対応するためには、避けては通れない重要なプロセスです。
将来の事業展開も見据え、適切なタイミングで目的の変更・追加を検討しましょう。
まとめ
本記事では、会社設立における事業目的の書き方を、基本ルールから具体的な作成ステップ、業種別の記載例まで網羅的に解説しました。
事業目的は、登記手続きに必須であるだけでなく、会社の信頼性や金融機関からの融資、許認可の取得にも直結する非常に重要な項目です。
将来の事業展開も見据え、「適法性・営利性・明確性・具体性」の4つのルールを遵守することが成功の鍵となります。
本記事で紹介したステップや記載例を参考に、貴社の未来を的確に表現する事業目的を作成してください。
