会社設立を決意したものの「何から決めればいいの?」「手続きが複雑そうで不安…」と感じていませんか。
会社設立は、一度決めると変更が難しい項目も多く、最初の設計が事業の将来を左右します。
この記事では、会社設立で決めるべき全13項目をチェックリスト形式で徹底解説。
株式会社と合同会社のどちらを選ぶべきか、資本金の最適な金額、定款作成から登記申請までの具体的な手順まで、この記事一本で後悔しない会社設立のすべてが分かります。
専門家へ相談する際のポイントも紹介しており、あなたの会社設立を成功へと導く完全ガイドです。
会社設立の前に知っておくべき基本知識
会社設立は、あなたのビジネスを次のステージへと進めるための重要な一歩です。
しかし、勢いだけで進めてしまうと、後から「こんなはずではなかった」と後悔することになりかねません。
そうならないためにも、まずは会社設立に関する基本的な知識をしっかりと押さえておくことが不可欠です。
この章では、会社設立を具体的に検討する前に、必ず知っておくべき「会社形態の選択」「全体のスケジュール感」「必要な費用」という3つの基本事項について、わかりやすく解説します。
株式会社と合同会社どちらを選ぶべきか
日本で設立できる会社にはいくつかの種類がありますが、そのほとんどが「株式会社」または「合同会社」です。
この2つの形態は、社会的信用度や設立・運営にかかるコスト、経営の自由度などに大きな違いがあります。
あなたの事業規模や将来の展望、資金計画に最適な形態を選ぶことが、成功への第一歩となります。
それぞれのメリット・デメリットを正しく理解し、慎重に比較検討しましょう。
株式会社のメリットとデメリット
株式会社は、株式を発行して資金を調達し、出資者(株主)から経営を委任された取締役が事業を行う会社形態です。
日本で最も多く選択されており、その社会的信用の高さが最大の魅力と言えるでしょう。
【メリット】
- 社会的信用度が高い: 「株式会社」という名称は、取引先や金融機関からの信頼を得やすく、ビジネスを円滑に進める上で有利に働きます。また、求人活動においても優秀な人材が集まりやすい傾向があります。
- 資金調達の方法が豊富: 株式を発行することで、広く一般から出資を募ることが可能です。ベンチャーキャピタルからの出資や、将来的な株式上場(IPO)も視野に入れることができます。
- 有限責任である: 出資者(株主)は、出資した金額の範囲内でのみ責任を負います。万が一会社が倒産しても、個人の財産まで差し押さえられることはありません。
- 事業承継がしやすい: 会社の所有権が株式という形で明確になっているため、株式を譲渡・相続することでスムーズに事業を後継者に引き継ぐことができます。
【デメリット】
- 設立費用が高い: 後述しますが、合同会社と比較して定款認証手数料や登録免許税などの法定費用が高額になります。
- 運営コストがかかる: 法律で決算公告が義務付けられており、そのための費用が発生します。また、役員には任期があり、任期満了ごとに変更登記(役員重任登記)が必要で、その都度登録免許税がかかります。
- 手続きが煩雑: 会社の重要な意思決定には株主総会の開催と決議が必要になるなど、会社法に則った厳格な手続きが求められます。
合同会社のメリットとデメリット
合同会社は、2006年の会社法施行によって新設された比較的新しい会社形態です。
Apple JapanやGoogleなど、世界的に有名な企業も日本法人として合同会社の形態をとっており、近年その数は増加傾向にあります。
出資者全員が会社の経営者(業務執行社員)となるのが基本です。
【メリット】
- 設立費用が安い: 株式会社で必要な定款認証が不要なため、その分の手数料がかかりません。また、登録免許税も株式会社より低く設定されています。
- 運営コストを抑えられる: 決算公告の義務がなく、役員の任期もないため、株式会社で発生する定期的な登記費用や公告費用がかかりません。
- 経営の自由度が高い: 利益の配分や役員の権限などを、出資比率に関わらず定款で自由に設計できます。意思決定も迅速に行えるため、スピーディーな経営が可能です。
- 有限責任である: 株式会社と同様に、出資者は出資額の範囲内でのみ責任を負います。
【デメリット】
- 社会的信用度が株式会社に劣る場合がある: 比較的新しい会社形態であるため、特に年配の経営者や地方の企業などでは認知度が低く、株式会社に比べて信用度が低いと見なされることがあります。
- 資金調達の方法が限定的: 株式の発行ができないため、上場(IPO)はできません。資金調達は、金融機関からの融資や、新たに出資者(社員)を加入させる方法が主になります。
- 社員間で対立が起こる可能性がある: 経営の自由度が高い反面、利益配分や経営方針を巡って出資者(社員)間で意見が対立した場合、収拾がつかなくなるリスクがあります。
- 事業承継が複雑: 社員の地位を譲渡するには、原則として他の全社員の同意が必要となり、手続きが煩雑になる場合があります。
会社設立までの全体像とスケジュール感
会社設立は、思い立ってすぐに完了するものではありません。
基本事項の決定から登記申請、設立後の手続きまで、やるべきことは多岐にわたります。
事前に全体像と必要な期間を把握し、計画的に準備を進めましょう。
一般的に、ご自身で全ての手続きを行う場合、準備開始から登記完了(会社設立)まで1ヶ月〜3ヶ月程度を見ておくと安心です。
司法書士などの専門家に依頼すると、よりスムーズに進めることができます。
- STEP1:会社設立の準備期間(約2週間〜1ヶ月)
会社の基本情報(商号、事業目的、本店所在地、資本金額など)を決定します。並行して、会社の実印や役員個人の印鑑証明書の取得など、必要書類の準備を進めます。 - STEP2:定款の作成・認証(約1週間)
会社の根本規則である「定款」を作成します。株式会社の場合は、作成した定款を公証役場で認証してもらう必要があります。合同会社の場合、定款の作成は必要ですが、公証役場での認証は不要です。 - STEP3:資本金の払込み(定款認証後)
発起人(出資者)個人の銀行口座に、決定した資本金を振り込みます。この時点ではまだ法人口座は開設できないため、個人口座を使用します。 - STEP4:登記申請書類の作成・法務局へ申請(申請から完了まで約1〜2週間)
会社設立登記申請書をはじめとする必要書類一式を作成し、本店所在地を管轄する法務局に提出します。この登記申請日が、会社の設立日となります。書類に不備がなければ、申請から1〜2週間程度で登記が完了します。 - STEP5:会社設立後の手続き(登記完了後〜)
登記が完了したら、税務署や年金事務所への届出、法人口座の開設など、事業を開始するために必要な各種手続きを行います。
会社設立にかかる費用の目安
会社設立には、法律で定められた「法定費用」と、印鑑作成代などの「その他の費用」がかかります。
法定費用は、株式会社と合同会社で大きく異なります。
特に、電子定款を利用することで、紙の定款で必要となる収入印紙代4万円を節約できる点は大きなポイントです。
以下に、会社設立にかかる費用の目安を会社形態別にまとめました。
| 費用項目 | 株式会社 | 合同会社 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 定款用収入印紙代 | 40,000円 | 40,000円 | 電子定款の場合はどちらも0円 |
| 定款認証手数料 | 30,000円~50,000円 | 0円 | 資本金の額によって変動 |
| 定款の謄本手数料 | 約2,000円 | 0円 | 1ページ250円程度 |
| 登録免許税 | 最低150,000円 | 最低60,000円 | 資本金額の0.7%(最低額に満たない場合は最低額を納付) |
| 法定費用合計(紙定款) | 約222,000円~ | 約100,000円~ | – |
| 法定費用合計(電子定款) | 約182,000円~ | 約60,000円~ | – |
上記の法定費用に加えて、以下の費用も必要となります。
- 会社実印などの印鑑作成費用:5,000円~30,000円程度
- 資本金:1円以上(事業を運営していくための初期資金)
- 司法書士など専門家への依頼費用:50,000円~150,000円程度(依頼する場合)
これらの費用を合計すると、会社設立にはある程度のまとまった資金が必要になることがわかります。
特に資本金は、会社の体力や信用度を示す重要な指標となるため、法定費用のほかに、当面の運転資金を含めて余裕を持った資金計画を立てることが重要です。
会社設立で決めることリスト全13項目

会社設立は、まるで家の設計図を描く作業に似ています。
どの部屋をどこに配置するか、どんな機能を持たせるかを一つひとつ決めていく必要があります。
ここでは、会社という「家」の設計図を完成させるために、あなたが決めなければならない重要事項をリストアップし、それぞれの決め方とポイントを詳しく解説します。
会社の基本事項の決め方
会社の根幹をなす、最も基本的な項目です。
これらはすべて、会社の憲法ともいえる「定款(ていかん)」に記載する必要があるため、慎重に決定しましょう。
会社形態 株式会社か合同会社か
最初に選択を迫られるのが、会社の形態です。日本で設立される会社のほとんどは「株式会社」か「合同会社」のどちらかです。
どちらの形態を選ぶかによって、資金調達のしやすさ、社会的信用度、設立費用、経営の自由度などが大きく変わってきます。
前の章で詳しく解説したメリット・デメリットを再確認し、あなたの事業計画や将来のビジョンに最適な形態を選びましょう。
例えば、将来的に外部からの出資や上場を目指すなら株式会社、スピーディーで自由な経営を重視するなら合同会社が適しています。
商号(会社名)の決め方とルール
商号(会社名)は、会社の顔となる重要な要素です。
顧客や取引先に覚えてもらい、事業内容をイメージさせる力があります。
自由に決めることができますが、いくつかのルールが存在します。
以下のルールとポイントを踏まえ、後悔のない商号を考えましょう。
| 項目 | 詳細と具体例 |
|---|---|
| 会社形態の明記 | 商号の中に「株式会社」や「合同会社」という文字を必ず含める必要があります。 商号の前につける(前株)か、後ろにつける(後株)かは自由に選べます。 (例:株式会社サンプル、サンプル合同会社) |
| 使用できる文字 | 漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字(大文字・小文字)、アラビア数字(0,1,2…)が使用できます。 記号は「&」「’」「,」「-」「.」「・」の6種類に限り、字句を区切る目的でのみ使用可能です。 |
| 同一商号・同一本店の禁止 | 同じ本店所在地に、すでに同じ商号の会社が登記されている場合、その商号は使用できません。 法務局のオンラインサービスなどで事前に調査しましょう。 |
| 有名企業との混同 | 誰もが知っている有名企業と間違われるような商号は、不正競争防止法に抵触する可能性があるため避けるべきです。 |
| ドメインの空き状況 | 会社のウェブサイトを立ち上げる際に必要となるドメイン名(〇〇.com、〇〇.co.jpなど)が取得可能か、事前に確認しておくことを強くおすすめします。 |
事業目的の決め方とポイント
事業目的とは、その会社が「どのような事業を行って利益を上げるのか」を具体的に示すものです。定款に必ず記載し、法務局で登記する必要があります。
事業目的は、会社の事業範囲を法的に定義するものであり、ここに記載されていない事業は原則として行えません。
事業目的を決める際は、以下のポイントを押さえましょう。
- 適法性・営利性・明確性:事業内容は、法律に違反せず、営利を目的とし、誰が読んでも理解できる明確な言葉で記載する必要があります。
- 将来性:すぐに始める事業だけでなく、将来的に展開する可能性のある事業も、あらかじめ記載しておきましょう。後から事業目的を追加するには、定款変更と変更登記の手続きが必要になり、費用と手間がかかります。
- 許認可の確認:建設業や飲食業、古物商など、事業を行うために国や自治体の許認可が必要な場合があります。その場合、事業目的に特定の文言を含める必要があるケースが多いため、事前に管轄の行政庁に確認することが重要です。
本店所在地の決め方
本店所在地とは、会社の主たる営業所の場所、つまり「会社の住所」です。
この住所は定款に記載し、登記する必要があります。納税地の決定や、裁判の管轄など、法律上の重要な基準となります。
本店所在地の選択肢としては、以下のような場所が考えられます。
- 自宅:家賃がかからずコストを抑えられますが、プライバシーの観点や、賃貸物件の場合は規約で法人登記が禁止されていないか確認が必要です。
- 賃貸オフィス:社会的信用度が高まりますが、保証金や月々の賃料などコストがかかります。
- バーチャルオフィス:住所や電話番号のみをレンタルするサービスです。低コストで都心の一等地の住所を使えるメリットがありますが、許認可が必要な業種(人材派遣業、士業など)では認められない場合や、金融機関の法人口座開設の審査が厳しくなる傾向があるため注意が必要です。
- コワーキングスペース:住所利用や法人登記が可能なプランを用意している施設もあります。他の起業家との交流が生まれる可能性もあります。
資本金の決め方と金額の目安
資本金は、事業を運営していくための元手となる資金です。
会社法上は1円からでも会社を設立できますが、1円での設立は現実的ではなく、会社の信用力や当面の運転資金を考慮して適切な金額を設定することが極めて重要です。
資本金の額を決める際の目安は以下の通りです。
- 当面の運転資金:設立当初は売上がすぐには立たないことも多いため、少なくとも3ヶ月〜半年程度の運転資金(家賃、人件費、仕入れ費など)をカバーできる金額を用意するのが一般的です。
- 社会的信用度:資本金の額は登記簿謄本に記載され、誰でも閲覧できます。あまりに少額だと、取引先や金融機関から「体力のない会社」と見なされ、信用を得にくい場合があります。
- 許認可の要件:特定の事業(建設業や一般労働者派遣事業など)を行うには、法律で定められた最低資本金額をクリアする必要があります。
- 税金への影響:資本金が1,000万円未満の場合、原則として設立から最大2事業年度、消費税の納税が免除されるというメリットがあります。(※インボイス制度の登録状況などにより異なります)
機関設計と役員に関する決め方
会社の運営体制、つまり「誰が、どのように会社を経営していくか」を定めるのが機関設計です。
特に株式会社において重要な項目となります。
役員構成の決め方
会社の経営を担う「役員」を誰にするかを決めます。
会社の規模や形態によって必要な役員の構成は異なります。
- 株式会社の場合:最低1名の「取締役」が必要です。個人で設立する場合は、自分一人が取締役となります。複数人で経営する場合や、会社の規模が大きくなる場合は、経営の監督と執行を分けるために「取締役会」や、業務・会計の監査を行う「監査役」を設置することもできます。役員の人数や構成は、会社の意思決定のスピードやガバナンス(企業統治)に直結します。
- 合同会社の場合:出資者である「社員」が経営も行うのが原則です。社員の中から、業務を執行する「業務執行社員」を定めます。さらに、会社を代表する「代表社員」も決めるのが一般的です。
また、会社設立の企画者である「発起人(ほっきにん)」と、設立後の役員は、必ずしも同じである必要はありません。
役員の任期の決め方
役員がその職務を行う期間を「任期」といいます。
株式会社の役員の任期は、法律で上限が定められています。
- 取締役の任期:原則として2年。
- 監査役の任期:原則として4年。
ただし、すべての株式に譲渡制限を設けている「非公開会社」では、定款で定めることにより、役員の任期を最長10年まで伸長することができます。
一人社長や家族経営など、役員の交代がほとんど想定されない会社では、任期を長く設定することで、任期満了ごとに必要となる変更登記の手間とコスト(登録免許税)を削減できるメリットがあります。
| 任期の長さ | メリット | デメリット |
|---|---|---|
| 短い(原則2年) | 経営陣の緊張感を保ちやすい。 問題のある役員を交代させやすい。 | 2年ごとに役員変更登記の手続きと費用(1万円または3万円)が発生する。 |
| 長い(最長10年) | 登記手続きの手間とコストを削減できる。 安定した経営体制を築きやすい。 | 経営能力のない役員でも任期中は解任しにくい。 経営の柔軟性が失われる可能性がある。 |
株式譲渡制限の有無
これは株式会社において決める事項です。株式譲渡制限とは、株主が保有する株式を第三者に譲渡する際に、会社の承認(株主総会や取締役会など)を必要とするルールを設けることです。
- 制限あり(非公開会社):会社の承認なく株式が第三者に渡るのを防ぐことができます。これにより、経営に関与してほしくない人物が株主になるのを防ぎ、経営の安定性を保つことができます。日本の多くの中小企業はこの形態をとっており、役員の任期を10年に伸長できるなどのメリットもあります。
- 制限なし(公開会社):株主は会社の承認なしに自由に株式を売買できます。上場企業などがこの形態です。
これから会社を設立するほとんどのケースでは、経営の安定化のために「株式譲渡制限を設ける(非公開会社)」を選択するのが一般的です。
事業年度と公告方法の決め方
会計や情報開示に関するルールも、設立時に決めておく必要があります。
税金の支払いや手続きのタイミングに影響する重要な項目です。
事業年度(決算期)の決め方
事業年度とは、会社の利益などを計算するための会計期間のことです。
この期間の最終日を「決算日」、その月を「決算月」と呼びます。
事業年度は1年以内であれば自由に設定できますが、多くの会社は1年間を事業年度としています。
決算日から2ヶ月以内に、税務署へ法人税などの申告と納税を行う必要があります。
決算期は一度決めると変更が大変なため、以下のような戦略的な視点で慎重に検討することが重要です。
- 繁忙期を避ける:本業の最も忙しい時期と、決算業務(棚卸し、書類作成など)や納税の時期が重ならないように設定するのが賢明です。
- 消費税の免税期間を最大限活用する:設立1期目の事業年度が長くなるように決算月を設定すると、消費税の免税期間をより長く享受できる可能性があります。例えば、4月1日に設立する場合、決算月を3月にすれば、1期目がほぼ12ヶ月となり、免税期間を最大限活用できます。
- 資金繰りを考慮する:納税は大きなキャッシュアウトを伴います。賞与の支払月や、大きな設備投資の支払月など、他の大きな支出と重ならないように配慮しましょう。
公告方法の決め方
公告(こうこく)とは、決算や合併など、法律で定められた重要事項を株主や債権者などの利害関係者に対して広く知らせるための手続きです。
定款で、以下のいずれかの方法を定める必要があります。
| 公告方法 | 特徴 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 官報に掲載 | 国が発行する機関紙に掲載する方法。最も一般的で、掲載料も安価。 多くの中小企業がこの方法を選択する。 | 1回 約7万円〜 |
| 日刊新聞紙に掲載 | 日本経済新聞など、全国または特定の地域で発行される日刊新聞紙に掲載する方法。 社会的信用度は高いが、掲載料が非常に高額。 | 1回 数十万円〜 |
| 電子公告 | 自社のウェブサイトに掲載する方法。掲載料はかからないが、決算公告以外の義務的な公告(合併公告など)を行う場合、公告期間中は適切に掲載されていることを証明するため、第三者機関(調査機関)の調査が必要になる場合があり、その費用が発生する。 | 調査費用 年間数万円〜 |
特にこだわりがなければ、コストが最も安い「官報に掲載」を選択するのが一般的です。
定款で公告方法を定めなかった場合は、自動的に「官報に掲載」となります。
会社設立の具体的な手続きと手順

会社の基本事項が決まったら、いよいよ法的な手続きに進みます。
会社設立の手続きは、大きく分けて「定款の作成・認証」「資本金の払い込み」「法務局への登記申請」という3つのステップで構成されます。
この章では、それぞれのステップで具体的に何をすべきかを、初心者の方にも分かりやすく解説します。
一つひとつの手続きを確実にこなしていくことが、スムーズな会社設立の鍵となります。
定款の作成と認証手続き
定款(ていかん)とは、会社の組織や運営に関する基本的なルールを定めた書類で、「会社の憲法」とも呼ばれる非常に重要なものです。
前の章で決めた商号、事業目的、本店所在地などを基に作成します。定款の作成方法は、書籍やテンプレートを参考に自分で作成する方法のほか、司法書士などの専門家に依頼する方法もあります。
定款には、紙で作成する「紙定款」と、PDFファイルで作成する「電子定款」の2種類があります。
電子定款を利用すれば、紙定款で必要となる収入印紙代4万円が不要になるという大きなメリットがありますが、作成には専用のソフトやICカードリーダライタなどが必要となります。
定款に記載すべき絶対的記載事項
定款には必ず記載しなければならない「絶対的記載事項」という項目があります。
このうち一つでも記載が漏れていると、定款そのものが無効になってしまうため、細心の注意が必要です。
株式会社における絶対的記載事項は以下の通りです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 事業目的 | 会社がどのような事業を行うのかを具体的に記載します。 適法性、営利性、明確性が求められます。 |
| 商号 | 会社の名前です。 同一本店所在地での同一商号は登記できません。 |
| 本店所在地 | 会社の住所です。 最小行政区画(例:「東京都新宿区」)までの記載で問題ありません。 |
| 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額 | 設立時の資本金の額を記載します。 |
| 発起人の氏名または名称および住所 | 会社を設立する人(発起人)全員の氏名と住所を記載します。 |
このほか、株式譲渡制限に関する規定や役員の任期など、定款に記載しなければ効力が生じない「相対的記載事項」や、会社の任意で定める「任意的記載事項」もあります。
公証役場での定款認証
作成した定款は、公証役場で認証を受ける必要があります。
これは、定款が正当な手続きによって作成されたことを公的に証明してもらうための手続きです。
なお、この定款認証が必要なのは株式会社のみで、合同会社の場合は不要です。
認証は、会社の本店所在地と同じ都道府県内にある公証役場で行います。
認証手続きには、以下のものが必要となります。
- 定款(3通)
- 発起人全員の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
- 収入印紙(紙定款の場合、4万円)
- 認証手数料(約5万円)
- 発起人全員の実印(または委任状)
電子定款の場合は、オンラインで認証手続きが可能です。
事前に公証人と打ち合わせの上、データを送信して認証を受けます。
資本金の払い込み
定款の認証が完了したら、次に行うのが資本金の払い込みです。
これは、発起人が定款で定めた出資額を、実際に払い込む手続きを指します。
払い込みのタイミングは、必ず定款の作成日以降、登記申請を行う前でなければなりません。
具体的な手順は以下の通りです。
- 発起人の代表者が、自身の個人名義の銀行口座を用意します。
- 各発起人は、その口座に自身の出資額を振り込みます。(代表者自身も自分の出資額を振り込む形で記帳します)
- すべての払い込みが完了したら、その通帳の「表紙」「銀行名・支店名・口座番号・名義人が記載されたページ」「各発起人からの振込が記帳されたページ」をコピーします。
- コピーした通帳と「払込証明書」を合わせて綴じ、会社の実印で契印します。この一式が、資本金が正しく払い込まれたことを証明する書類となります。
注意点として、この時点ではまだ会社の法人口座は開設できないため、発起人個人の口座を使用します。
既存の口座でも問題ありませんが、入出金が頻繁な口座だと証明が複雑になるため、残高が0円の口座や、新規に口座を開設するとスムーズです。
法務局への登記申請
定款認証、資本金の払い込みが完了したら、いよいよ最終ステップである法務局への登記申請です。
会社の設立登記を法務局に申請し、受理された日が「会社設立日」となります。
申請は、会社の本店所在地を管轄する法務局で行います。
会社設立登記に必要な書類一覧
登記申請には、多くの書類が必要となります。
不備があると修正に時間がかかり、希望の設立日に間に合わなくなる可能性もあるため、慎重に準備しましょう。
株式会社の設立で一般的に必要となる書類は以下の通りです。
| 書類名 | 概要 |
|---|---|
| 設立登記申請書 | 会社の基本情報を記載するメインの申請書です。 法務局のウェブサイトから書式をダウンロードできます。 |
| 登録免許税納付用台紙 | 登録免許税分の収入印紙を貼り付ける台紙です。 資本金の額×0.7%(最低15万円)が必要です。 |
| 定款 | 公証役場で認証を受けた定款の謄本です。 |
| 発起人の決定書(または発起人会議事録) | 本店所在地を番地まで具体的に決定したことを証明する書類です。 |
| 役員の就任承諾書 | 取締役に就任することを承諾した旨を記載した書類です。 |
| 印鑑証明書 | 取締役全員(取締役会を設置しない場合)または代表取締役(取締役会を設置する場合)の印鑑証明書が必要です。 |
| 払込証明書 | 資本金の払い込みがあったことを証明する書類です。通帳のコピーと合わせて綴じます。 |
| 印鑑届書 | 会社の実印(代表者印)を法務局に登録するための書類です。 |
これらの書類に加え、会社の状況によっては他の書類(監査役の就任承諾書など)が必要になる場合もあります。
オンライン(電子申請)での登記方法
登記申請は、法務局の窓口や郵送だけでなく、オンライン(電子申請)でも行うことができます。
法務省の「登記・供託オンライン申請システム」を利用します。
オンライン申請のメリットは、法務局へ出向く必要がなく、24時間いつでも申請が可能な点です。
ただし、利用するにはマイナンバーカードやICカードリーダライタ、専用ソフトのインストールなど、事前の準備が必要です。
手続き自体もやや複雑なため、ITに不慣れな方や、手続きを迅速かつ確実に完了させたい場合は、司法書士などの専門家に依頼することも有効な選択肢です。
専門家に依頼すれば、書類作成から申請までを代行してもらえるため、本業の準備に集中することができます。
会社設立後に必要な手続き

会社設立は、法務局への登記申請が完了すれば終わりではありません。
登記完了後、事業を本格的にスタートさせるためには、税務や社会保険に関するさまざまな届出が不可欠です。
これらの手続きを怠ると、受けられるはずの税制上の優遇措置を逃してしまったり、思わぬペナルティが課されたりする可能性があります。
ここでは、会社設立後に必ず行うべき手続きを、提出先ごとに分かりやすく解説します。
税務署への届出
会社の設立後は、納税の義務が生じます。まずは本店所在地を管轄する税務署へ、法人として事業を開始したことを知らせるための届出を行いましょう。
特に「青色申告の承認申請書」は、提出期限が厳格に定められており、節税効果も大きいため、設立後速やかに提出することが重要です。
主要な届出書類は以下の通りです。
| 書類名 | 提出期限 | 概要とポイント |
|---|---|---|
| 法人設立届出書 | 設立の日から2ヶ月以内 | 全ての会社が提出必須の書類です。 会社の基本情報(商号、本店所在地、事業年度など)を税務署に届け出ます。 定款の写しなどの添付書類が必要です。 |
| 青色申告の承認申請書 | 設立の日から3ヶ月を経過した日と、第1期の事業年度終了日のうち、いずれか早い日の前日まで | 欠損金の繰越控除や少額減価償却資産の特例など、多くの税制優遇を受けられる青色申告を行うために必須の申請書です。 提出しない場合は自動的に白色申告となり、節税メリットを享受できません。 |
| 給与支払事務所等の開設届出書 | 給与支払事務所の開設から1ヶ月以内 | 役員報酬や従業員への給与を支払う場合に提出します。 会社を設立し、役員報酬を支払う場合は必ず必要となる書類です。 |
| 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 適用を受けたい月の前月末日まで | 給与を支払う従業員が常時10人未満の場合、源泉所得税の納付を毎月から年2回(7月と1月)にまとめることができる特例です。 資金繰りと事務負担の軽減に繋がります。 |
これらの届出は、都道府県税事務所や市町村役場にも必要な場合があります。
「法人設立届出書」は、国税(税務署)だけでなく、地方税(都道府県・市町村)についても忘れずに提出しましょう。
年金事務所や労働基準監督署への届出
従業員を雇用する場合だけでなく、社長1人の会社であっても、社会保険(健康保険・厚生年金保険)への加入は法律で義務付けられています。
また、従業員(パート・アルバイト含む)を1人でも雇用した場合は、労働保険(労災保険・雇用保険)の手続きも必要です。
社会保険(健康保険・厚生年金保険)の手続き
たとえ社長1人だけの会社であっても、法人である以上、社会保険への加入は必須です。
個人事業主の場合とは異なり、役員報酬を受け取る場合は強制加入となる点に注意が必要です。
| 書類名 | 提出先 | 提出期限 |
|---|---|---|
| 健康保険・厚生年金保険 新規適用届 | 管轄の年金事務所 | 会社設立の事実発生から5日以内 |
| 健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届 | 管轄の年金事務所 | 資格取得の事実発生から5日以内 |
労働保険(労災保険・雇用保険)の手続き
従業員(パート・アルバイトを含む)を1人でも雇用した際に必要となる手続きです。
労災保険は業務中や通勤中のケガなどに対する保険、雇用保険は失業時などに給付を受けるための保険です。
| 書類名 | 提出先 | 提出期限 |
|---|---|---|
| 労働保険関係成立届 | 管轄の労働基準監督署 | 保険関係が成立した日の翌日から10日以内 |
| 雇用保険 適用事業所設置届 | 管轄のハローワーク | 事業所を設置した日の翌日から10日以内 |
| 雇用保険 被保険者資格取得届 | 管轄のハローワーク | 資格取得の事実があった月の翌月10日まで |
これらの保険手続きは期限が短く、提出先も複数に分かれているため、計画的に進めることが大切です。
法人口座の開設
会社の登記が完了し、登記簿謄本(履歴事項全部証明書)が取得できるようになったら、速やかに法人口座を開設しましょう。
法人口座は、会社の信用力を示す上で非常に重要です。
また、事業の取引や資金の流れを個人の資産と明確に区別することで、経理処理の透明性を確保し、税務調査などにもスムーズに対応できます。
法人口座の開設は、個人口座の開設に比べて審査が厳しく、時間がかかる傾向にあります。
近年はマネーロンダリング対策などの観点から、事業内容や事業計画について詳細な説明を求められることも少なくありません。
口座開設に必要な主な書類は以下の通りですが、金融機関によって異なるため、事前に必ず確認してください。
- 履歴事項全部証明書(登記簿謄本)(発行後3ヶ月以内のもの)
- 法人の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)
- 定款の写し
- 税務署へ提出した「法人設立届出書」の控え
- 代表者の本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカードなど)
- 法人の実印および銀行印
メガバンク、地方銀行、信用金庫、ネット銀行など、それぞれの金融機関に特徴があります。
手数料や利便性、融資相談のしやすさなどを比較検討し、自社の事業に合った金融機関を選びましょう。
審査に時間がかかることを見越して、複数の金融機関に同時に申し込みを進めるのも一つの方法です。
専門家に相談するメリットと選び方

会社設立の手続きは、書籍やインターネットの情報をもとに自分自身で行うことも可能です。
しかし、煩雑な書類作成や手続きに時間を取られ、本来集中すべき事業の準備がおろそかになってしまうケースも少なくありません。
そこで頼りになるのが、会社設立の専門家です。費用はかかりますが、時間と労力を大幅に削減し、ミスなく確実に会社を設立できるという大きなメリットがあります。
ここでは、どのような専門家に何を依頼できるのか、そして後悔しない専門家選びのポイントを解説します。
司法書士に依頼できること
司法書士は「登記の専門家」です。
会社設立における法務局への登記申請は、司法書士の独占業務であり、手続きの代行を依頼する際の中心的な役割を担います。
司法書士に依頼できる主な内容は以下の通りです。
- 類似商号・事業目的の適法性調査
- 定款の作成および公証役場での認証手続き代行
- 会社設立登記申請書類一式の作成
- 法務局への登記申請代行
- 設立後の登記事項証明書(登記簿謄本)や印鑑証明書の取得代行
最大のメリットは、司法書士が電子定款を作成・認証することで、通常必要となる収入印紙代4万円が不要になる点です。
司法書士への報酬を支払っても、結果的に自分で手続きするより費用を抑えられるケースも少なくありません。
また、法的な観点から事業目的に不備がないかなどをチェックしてもらえるため、設立後に事業目的を追加するなどの手間とコストを未然に防ぐことができます。
税理士に依頼できること
税理士は「税務と会計の専門家」です。会社設立「後」の税務手続きや経営を見据えて、設立「前」の段階からアドバイスをもらえるのが大きな特徴です。
司法書士のように登記申請の代行はできませんが、提携している司法書士を紹介してくれる場合がほとんどです。
税理士に相談・依頼できる主な内容は以下の通りです。
- 資本金の金額決定に関する税務上のアドバイス(消費税の免税など)
- 事業年度(決算期)の決定に関するコンサルティング
- 役員報酬の最適な金額設定に関する相談
- 設立後の税務署や都道府県税事務所などへの各種届出書類の作成・提出代行
- 会計ソフトの選定や導入支援
- 創業融資や助成金・補助金の申請サポート
会社を設立すると、利益が出ていなくても法人住民税の支払い義務が生じるなど、個人事業主とは異なる税金のルールが適用されます。
設立段階から税理士と連携することで、最適な節税対策を講じ、資金繰りを安定させることができます。
特に、設立後の顧問契約を前提に、会社設立の代行手数料を無料または割引価格で提供している税理士事務所も多く存在します。
司法書士と税理士の役割をまとめると、以下のようになります。
| 専門家 | 主な役割 | 会社設立時に依頼できることの例 |
|---|---|---|
| 司法書士 | 登記の専門家 | 定款作成・認証、設立登記申請の代行など、法的に会社を成立させるための手続き全般。 |
| 税理士 | 税務・会計の専門家 | 資本金や決算期、役員報酬の決定など、税務・財務面からのアドバイス。設立後の税務署への届出代行。 |
専門家選びで失敗しないためのポイント
いざ専門家に依頼しようと思っても、数多くの事務所の中からどこを選べば良いか迷ってしまうかもしれません。
ここでは、信頼できる専門家を見つけるための4つの重要なポイントをご紹介します。
ポイント1:会社設立の実績が豊富か
会社設立の手続きは、法改正などの影響を受けることもあります。
そのため、会社設立に関する最新の知識と豊富な実務経験を持つ専門家を選ぶことが重要です。
事務所のウェブサイトで、これまでの設立実績件数や、顧客からの声などを確認しましょう。
実績が多ければ多いほど、様々な業種やケースに対応してきたノウハウの蓄積が期待できます。
ポイント2:費用体系が明確か
「会社設立手数料0円」と謳っていても、実際には税務顧問契約が必須であったり、別途費用が発生したりする場合があります。
依頼する前に必ず見積もりを取り、「どこからどこまでが料金に含まれているのか」を詳細に確認しましょう。
登記申請の実費(登録免許税など)と専門家への報酬が明確に分けられているか、追加料金が発生するケースはあるかなどを事前に質問しておくことで、後のトラブルを防げます。
ポイント3:コミュニケーションの取りやすさ(相性)
専門家とは、会社設立後も税務顧問や法律相談などで長い付き合いになる可能性があります。
そのため、スキルや実績だけでなく、人としての相性も非常に重要です。
無料相談などを利用して、実際に担当者と話してみることを強くおすすめします。
- 専門用語を使わず、分かりやすい言葉で説明してくれるか
- 質問に対して、迅速かつ的確に回答してくれるか
- 親身になって相談に乗ってくれるか
こうした点を確認し、あなたが「この人になら安心して会社の未来を相談できる」と感じられるパートナーを選びましょう。
ポイント4:ワンストップ対応が可能か
会社設立には、司法書士が担当する「登記」と、税理士が担当する「税務」という、異なる分野の手続きが密接に関わっています。
司法書士と税理士が提携している事務所や、両方の専門家が在籍している法人に依頼すれば、窓口が一本化され、手続きがスムーズに進みます。
自分で別々に専門家を探す手間が省け、情報の伝達もスムーズになるため、依頼者側の負担を大幅に軽減できるでしょう。
まとめ
会社設立は、事業の成功に向けた重要な第一歩です。
会社形態の選択から商号、資本金、事業年度の決定まで、多くの項目を検討する必要があり、計画的な準備が欠かせません。
本記事で解説した「決めることリスト」と具体的な手続きの流れに沿って、一つずつ着実に進めていきましょう。
これらの決定は、将来の経営の自由度や税務に大きく影響するため、慎重な検討が成功の鍵となります。
手続きに不安がある場合は、司法書士や税理士といった専門家の活用も有効な選択肢です。
本ガイドを参考に、後悔のない会社設立を実現してください。
