「合同会社にして後悔している…」そんな声、実は意外と多いんです。
設立の簡易さや税制メリットに惹かれて合同会社を選択したものの、事業の成長や社会情勢の変化によって、思わぬデメリットに直面するケースがあるのです。
この記事では、合同会社設立で後悔しやすい代表的な5つの落とし穴を詳しく解説します。
赤字でも容赦なく課される均等割、株式会社に比べて低いとされる社会的信用度、そして意外と高額な設立費用。
さらに、株式会社への変更手続きの煩雑さや、出資の払い戻しの難しさなど、設立前に必ず知っておくべき落とし穴を具体例を交えながら明らかにします。また、それぞれの落とし穴に対する具体的な回避策も提示。
事業計画の綿密な策定、資金調達方法の多様化、専門家への相談など、後悔しないためのポイントを分かりやすく解説することで、あなたにとって最適な会社形態の選択をサポートします。
合同会社設立を検討中の方、既に合同会社で事業を営んでいる方も、ぜひこの記事を読んで、将来のリスクを最小限に抑え、事業の成功へと繋げてください。
メリットだけじゃない!合同会社設立前に知っておくべきこと
合同会社は、設立の容易さや柔軟な運営など、多くのメリットが注目されがちです。
しかし、メリットの裏側には、設立前にしっかりと理解しておくべきデメリットや落とし穴も存在します。
安易に設立を決断してしまうと、「こんなはずじゃなかった…」と後悔する可能性も。
この章では、合同会社設立のメリットだけに囚われず、デメリットや注意点も含めた多角的な視点を持つことの重要性について解説します。
特に、会社形態の選択は、事業の成長や将来的なビジョンに大きく影響するため、慎重な検討が必要です。
合同会社の特徴を正しく理解し、自身の事業プランとの適合性を確認することで、設立後のミスマッチや後悔を未然に防ぎましょう。
メリットとデメリットを比較検討し、本当に自分の事業に最適な形態なのかをじっくり考えることが重要です。
例えば、資金調達のしやすさや社会的信用度、将来的な事業展開などを考慮に入れる必要があります。
また、税制面や法律面での違いも理解しておくべきです。
短期的なメリットだけでなく、中長期的な視点で判断することが、事業の成功へと繋がる鍵となります。
設立前に確認すべきポイント
合同会社設立前に確認すべき重要なポイントを以下にまとめました。
これらのポイントを踏まえ、自身の事業計画と照らし合わせながら、総合的に判断することが大切です。
確認ポイント | 詳細 |
---|---|
事業内容との適合性 | 小規模事業やスタートアップ、特定の専門分野での事業展開など、合同会社の特性が活かせる事業内容かどうかを検討します。 |
資金調達計画 | 銀行融資の難易度や、ベンチャーキャピタルからの出資の可能性など、資金調達方法を多角的に検討し、合同会社が適切な形態かどうかを判断します。クラウドファンディングなども視野に入れましょう。 |
将来的な事業展開 | 事業規模の拡大や株式上場、M&Aなどを将来的に検討している場合、合同会社から株式会社への変更手続きやその費用、手間などを考慮する必要があります。 |
税務・会計処理 | 合同会社と株式会社の税制の違い、会計処理の複雑さなどを理解し、自身のリソースや専門家への相談の必要性などを検討します。freeeやマネーフォワードクラウド会計などのクラウド会計ソフトの導入も検討しましょう。 |
法的責任 | 合同会社における社員の有限責任と無限責任の違い、業務執行社員の権限と責任などを理解しておく必要があります。 |
社会的信用 | 取引先や顧客からの信用度、事業提携の可能性など、合同会社に対する社会的な認識を考慮し、事業への影響を予測します。 |
定款作成 | 定款の内容が事業の実態に即しているか、将来の変更の可能性なども考慮し、柔軟性を持たせた内容にする必要があります。 |
合同会社と株式会社の比較
合同会社と株式会社の違いを理解することは、最適な会社形態を選択する上で非常に重要です。
以下の表で主な違いを比較します。
項目 | 合同会社 | 株式会社 |
---|---|---|
設立費用 | 比較的安価 | 比較的高価 |
設立手続き | 比較的簡単 | 比較的複雑 |
社員の責任 | 出資額の範囲内(有限責任) | 出資額の範囲内(有限責任) |
意思決定 | 社員全員の合意 | 株主総会による決議 |
資金調達 | 銀行融資はやや不利、株式発行不可 | 銀行融資は比較的有利、株式発行可能 |
社会的信用 | 株式会社に比べて低い場合も | 比較的高い |
税金 | 法人住民税の均等割あり | 法人住民税の均等割あり |
上記以外にも、組織運営の柔軟性や、経営の自由度など、様々な違いがあります。
これらの違いを踏まえ、自身の事業に最適な形態を選択することが重要です。
落とし穴1 赤字でも税金がかかる
合同会社は、赤字であっても一定の税金を支払う必要があります。
これは、株式会社とは異なり、利益の有無に関わらず課税される「均等割」の存在が大きな要因です。
この均等割は、地方税である法人住民税と法人事業税に含まれており、事業年度の所得にかかわらず固定的に課税されます。
赤字経営が続くと、収益がないにもかかわらず税金を払い続けなければならないため、資金繰りを圧迫する可能性があります。
特に、設立当初や事業が軌道に乗るまでの期間は、赤字になりやすい傾向があるため、均等割の負担は無視できない要素となります。
均等割の負担
均等割は、都道府県民税、市町村民税(法人住民税)、そして法人事業税に分けられます。
これらの税額は、事業を営む自治体の規模や資本金等の基準によって異なります。
例えば、東京都23区内では、法人住民税の均等割は年間7万円、法人事業税の均等割は年間5万円と、合計で年間12万円の均等割を負担することになります。
地方自治体によっては、均等割の減免措置を設けている場合もありますが、適用条件が厳しいため、多くの合同会社は均等割の負担を免れません。
また、事業年度の開始から1年間は、均等割が免除される猶予期間が設けられている自治体もありますが、2年目以降は均等割の納税義務が生じます。
税目 | 内容 | 金額(例:東京都23区内) |
---|---|---|
法人住民税 | 都道府県民税、市町村民税 | 7万円/年 |
法人事業税 | 事業規模に応じて課税 | 5万円/年 |
節税メリットを享受できないケース
合同会社は、パススルー課税という課税方式を採用しており、法人ではなく社員(出資者)に直接課税されます。
このため、法人税と所得税の二重課税を回避できるというメリットがあります。
しかし、赤字の場合は、そもそも課税対象となる利益が存在しないため、パススルー課税のメリットを享受できません。
また、赤字が続くと、欠損金の繰越控除も利用できません。
さらに、事業規模が小さい場合、青色申告特別控除(65万円控除)のメリットも限定的になります。
これらの要因から、赤字の状態では、合同会社の節税メリットを十分に活かせない可能性が高いと言えます。
そのため、事業計画段階で、初期費用やランニングコスト、売上予測などを綿密に検討し、早期の黒字化を目指すことが重要です。
また、赤字の場合、給与所得控除も受けられないため、社員への給与支払いが節税対策にならない点にも注意が必要です。
特に、自身も社員として給与を受け取っているオーナー社長の場合は、赤字経営下での給与設定は慎重に行う必要があります。
合同会社設立前に、税理士等の専門家に相談し、自身の事業計画における税金負担をシミュレーションしておくことを強く推奨します。
そうすることで、想定外の税金負担による資金繰りの悪化を防ぎ、事業の安定的な運営を実現できる可能性が高まります。
落とし穴2 社会的信用度が低い?
合同会社は、株式会社と比較して社会的信用度が低いと認識されるケースがあることは否めません。
特に、伝統的な業界や大企業との取引において、その認識の違いが障壁となる可能性があります。
「合同会社だから…」という理由で、不利な扱いを受ける可能性もゼロではありません。
ただし、これは絶対的なものではなく、事業内容や実績、そして企業努力によって十分に覆すことが可能です。
重要なのは、この点を認識し、適切な対策を講じることです。
銀行融資
合同会社の場合、銀行融資を受ける際に、株式会社に比べて審査が厳しくなる、あるいは融資額が低くなる可能性があります。
これは、合同会社特有の制度設計に起因する部分も少なくありません。
例えば、株式会社のように株式を発行して資金調達することができないため、資金調達の選択肢が限られると見なされる場合があります。
また、出資の払い戻しが容易ではないため、銀行側から見るとリスクが高いと判断される可能性もあります。
もちろん、事業の将来性や収益性、代表者の信用情報など、他の要素も融資審査において重要な役割を果たします。
しっかりと事業計画を策定し、金融機関との良好な関係を築くことが重要です。
項目 | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|
資金調達 | 株式発行、社債発行など多様な手段 | 主に借入金、増資 |
出資の払い戻し | 比較的容易 | 原則として難しい |
銀行の評価 | 資金調達力が高く、リスクが低いと評価されやすい | 資金調達力が低く、リスクが高いと評価される可能性がある |
取引先との関係
一部の取引先、特に大企業や官公庁などは、取引相手として合同会社を選択することに慎重な場合があります。
これは、歴史的に株式会社が主流であり、合同会社に対する理解が不足している場合や、取引におけるリスク管理の観点から、株式会社を優先する社内規定が存在する場合などが考えられます。
また、信用情報が得にくいというイメージも少なからず影響しているでしょう。
このような状況を打破するためには、会社の信頼性を高める努力が不可欠です。
例えば、会社のウェブサイトやパンフレットなどで、事業内容や実績、経営理念などを明確に示す、第三者機関の認証を取得する、取引先からの推薦状を得るなど、積極的に情報発信を行うことで、取引先の不安を払拭することが重要です。
また、担当者との良好な人間関係を構築することも、信頼関係を築く上で大きな役割を果たします。
さらに、取引開始前に、取引条件や契約内容を明確にすることで、相互の理解を深め、スムーズな取引を実現できるでしょう。
商談の際には、会社の強みや特徴をアピールし、取引先にとってのメリットを明確に伝えることも重要です。
継続的な情報提供や丁寧な対応を通じて、信頼関係を構築し、長期的な取引につなげることが大切です。
落とし穴3 設立費用が意外と高い
合同会社は株式会社に比べて設立費用が安いとよく言われますが、実際には想定外の出費がかさみ、結果的に「意外と高い」と感じてしまうケースも少なくありません。
しっかりと事前に費用を把握し、予算を立てておくことが重要です。
思わぬ出費で後悔しないために、設立費用に関する落とし穴を詳しく見ていきましょう。
登録免許税
合同会社を設立する際には、登録免許税として最低でも6万円の納付が必要です。
これは株式会社の最低額である15万円と比べると確かに安価ですが、資本金の額に応じて増加する仕組みであることは注意が必要です。
資本金1,000万円を超えると、株式会社と同じ15万円になります。
事業規模によっては、合同会社のメリットが薄れてしまう可能性もあるため、資本金設定は慎重に行うべきです。
電子定款認証の落とし穴
合同会社の設立費用を抑える方法として、電子定款認証が挙げられます。紙の定款で認証を受ける場合、収入印紙代として4万円が必要ですが、電子定款であれば不要です。
しかし、電子定款を作成するためには、パソコンや電子証明書が必要になります。
これらの機器やソフトウェアを持っていない場合は、新たに購入したり、専門業者に依頼したりする必要が生じ、結果的に費用がかさんでしまう可能性があります。
また、電子証明書の取得にも費用と手間がかかります。
これらの費用を事前に見積もり、本当に費用を抑えられるのかを検討することが大切です。
さらに、電子定款の作成には専門的な知識が必要となる場合もあります。
定款に不備があると認証が受けられず、修正のために時間と費用が追加で発生するリスクも考慮しなければなりません。
そのため、自身で電子定款を作成することに不安がある場合は、専門家(司法書士や行政書士など)に依頼することも検討しましょう。
専門家に依頼する費用と、自身で作成する場合の費用とリスクを比較し、最適な方法を選択することが重要です。
公証人手数料
定款認証にかかる公証人手数料も設立費用の一部です。
電子定款であっても、公証人の認証は必要です。
この手数料は、定款の内容や長さによって変動します。
複雑な定款を作成する場合は、公証人手数料も高くなる可能性があるため、注意が必要です。
定款の内容を必要最低限にする、あるいは専門家に相談することで、費用を抑えることができるかもしれません。
その他の費用
登録免許税や定款認証費用以外にも、設立費用として考慮すべき項目があります。
例えば、法務局への登記申請を司法書士に依頼する場合の報酬、会社印の作成費用、事業開始に必要な備品購入費用などです。
これらの費用も積み重なると、大きな負担となる可能性があります。
以下に、その他の費用項目をまとめてみました。
費用項目 | 内容 | おおよその費用 |
---|---|---|
司法書士報酬 | 登記申請手続き代行 | 数万円~ |
会社印の作成 | 代表者印、銀行印、社印など | 数千円~数万円 |
事務所設立費用 | 賃貸契約、内装工事、備品購入など | 数万円~数百万円 |
開業届出費用 | 税務署、都道府県税事務所、市町村役場への届出 | 無料(ただし、書類作成を依頼する場合は別途費用) |
これらの費用を事前に見積もり、設立費用全体を把握しておくことが、合同会社設立における重要なポイントです。
「設立費用が安い」というイメージだけで安易に設立を決めると、後々後悔する可能性があります。
しっかりと準備を行い、スムーズな事業開始を目指しましょう。
落とし穴4 株式会社への変更が面倒
合同会社から株式会社へ組織変更する場合、意外と手続きが煩雑で、多くの時間と費用がかかります。
設立時とは異なり、単純な手続きでは済まないことを理解しておきましょう。
変更を検討し始めた段階で、必要な手順やコストを把握し、本当に変更する必要があるのかを慎重に見極めることが重要です。
手続きの煩雑さ
株式会社への変更は、新規に株式会社を設立するよりも複雑な手続きが必要になります。
合同会社を解散する手続きと、新たに株式会社を設立する手続きを同時に行うようなイメージです。
具体的には、以下の手続きが必要です。
- 株式会社設立の登記申請書類の作成
- 合同会社解散の登記申請書類の作成
- 財産評価
- 債権者保護手続き
- 株主総会の開催
- 設立登記、解散登記
これらの手続きは、それぞれ専門的な知識を必要とするため、司法書士や税理士などの専門家への依頼が一般的です。
そのため、費用もかさむ傾向にあります。
また、手続きには数週間から数ヶ月かかる場合もあります。
事業運営への影響も考慮に入れ、余裕を持ったスケジュールで進める必要があります。
費用と時間
株式会社への組織変更には、登録免許税や司法書士への報酬など、様々な費用が発生します。
費用の内訳はケースによって異なりますが、おおよそ以下の項目が考えられます。
項目 | 内容 | 概算費用 |
---|---|---|
登録免許税 | 株式会社設立登記、合同会社解散登記にかかる税金 | 数十万円 |
司法書士報酬 | 登記手続きの代行費用 | 数万円〜数十万円 |
税理士報酬 | 税務処理に関する相談、書類作成費用 | 数万円〜数十万円 |
公告費用 | 債権者保護手続きのための官報公告費用 | 数万円 |
上記はあくまでも概算であり、会社の規模や手続きの複雑さによって変動します。
また、時間についても同様に、数週間から数ヶ月かかることが一般的です。
これらの費用と時間を考慮すると、安易に組織変更を決定することは避け、慎重な検討が必要となります。
例えば、合同会社から株式会社への変更においては、資本金の額が重要になります。
株式会社には最低資本金制度がないため、合同会社から変更する場合、資本金をどのように設定するかが課題となります。
また、合同会社では出資の払い戻しが容易ではないため、株式会社への変更時に株主への配分をどのように行うかについても検討が必要です。
これらの点を踏まえ、専門家と綿密に相談しながら進めることが重要です。
さらに、組織変更に伴い、定款の作成や株主総会の開催が必要になります。
定款には、会社の目的や事業内容、組織、運営方法などを記載する必要があり、専門的な知識が必要です。
株主総会では、組織変更に関する決議を行う必要があり、適切な運営が求められます。
これらの手続きに不備があると、組織変更が認められない可能性もあるため、注意が必要です。
そのため、組織変更を検討する際には、事前に綿密な計画を立て、専門家のサポートを受けることが不可欠です。
落とし穴5 出資の払い戻しが難しい
合同会社では、株式会社のように自由にいつでも出資の払い戻しを受けることができません。
これは、合同会社の出資が「持分」という形で表され、この持分の払い戻しには様々な制約があるためです。
安易に考えていると、事業から撤退したくても資金が回収できず、身動きが取れなくなる可能性があります。この落とし穴について、詳しく見ていきましょう。
定款による制限
合同会社における出資の払い戻しは、定款で定められた方法に従って行われます。
定款に払い戻しの規定がない場合、または規定があっても非常に厳しい条件が付されている場合、事実上払い戻しを受けることが困難になります。
例えば、全社員の同意が必要、特定の事業年度の利益からのみ払い戻し可能、などといった制限が考えられます。
また、定款に払い戻しの規定があったとしても、会社の財産状況によっては払い戻しができない場合もあります。
債務超過の状態では、出資の払い戻しを行うと債権者への支払いができなくなる可能性があるため、法律で禁止されています。
つまり、事業がうまくいかず赤字が続いている場合、たとえ定款で払い戻しが認められていても、実際には払い戻しを受けられない可能性が高いのです。
メンバー間の合意形成
合同会社は少人数で経営されることが多く、メンバー間の関係性が事業運営に大きな影響を与えます。
出資の払い戻しについても、全社員の同意が必要となるケースが多く、一人でも反対すれば払い戻しは実現しません。
人間関係が悪化している場合や、事業の方向性で意見が対立している場合などは、合意形成が難航し、払い戻しを受けられない可能性があります。
特に、創業メンバーの一人が事業から撤退したい場合、残りのメンバーがその出資を買い取る必要があるケースも出てきます。
しかし、買い取り資金が不足していたり、他のメンバーが買い取りに消極的であったりすると、撤退が困難になる可能性があります。
円満な関係を維持するためにも、出資の払い戻しに関するルールを事前にしっかりと定めておくことが重要です。
払い戻しに関するトラブル事例
以下は、出資の払い戻しに関するトラブルの事例です。
事例 | 内容 | 結果 |
---|---|---|
A社 | 定款に出資の払い戻しに関する規定がなく、業績悪化により撤退を希望した社員が出資を回収できなかった。 | 資金繰りが悪化し、事業継続が困難になった。 |
B社 | メンバー間で事業の方向性の違いが生じ、撤退を希望した社員が出資の払い戻しを求めたが、他の社員が反対し、合意に至らなかった。 | 人間関係が悪化し、訴訟に発展した。 |
C社 | 定款に払い戻し規定はあったものの、債務超過の状態であったため、出資の払い戻しができなかった。 | 撤退を希望した社員は、出資金を回収できず、多額の損失を被った。 |
これらの事例からもわかるように、出資の払い戻しは、合同会社における大きなリスク要因となります。
会社設立前に、定款の内容をよく確認し、メンバー間で十分に話し合っておくことが重要です。
また、事業計画を綿密に立て、資金繰りを健全に保つことで、払い戻しに関するトラブルを未然に防ぐことができます。
株式会社との比較
株式会社の場合、株式を売却することで出資を回収できます。
株式市場に上場していれば、自由に株式を売買できますし、非上場企業でも、他の株主や第三者に株式を譲渡することで、比較的容易に出資を回収できます。
一方、合同会社には株式市場のような流動性がないため、出資の回収は容易ではありません。
項目 | 株式会社 | 合同会社 |
---|---|---|
出資の形態 | 株式 | 持分 |
払い戻しの容易さ | 比較的容易 | 難しい |
流動性 | 高い | 低い |
このように、合同会社と株式会社では、出資の払い戻しに関して大きな違いがあります。
それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、自身の事業に適した会社形態を選択することが重要です。専門家への相談も有効な手段です。
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合同会社にして後悔しないための回避策
合同会社設立後に「こんなはずじゃなかった…」と後悔しないためには、事前の準備と情報収集が不可欠です。
設立前に以下のポイントを踏まえ、慎重に検討しましょう。
事業計画の綿密な策定
合同会社設立の目的、事業内容、ターゲット市場、収益モデルなどを明確に定義した事業計画書を作成しましょう。
現実的な売上予測、費用見積もりを行い、損益分岐点や資金繰り計画を立て、赤字経営に陥るリスクを最小限に抑えることが重要です。
市場調査や競合分析も怠らないようにしましょう。
綿密な事業計画は、融資を受ける際にも有利に働きます。
事業計画書の構成要素
- 事業概要:事業内容、設立の目的、将来展望などを記述
- 市場分析:市場規模、成長性、競合分析などを記述
- 商品・サービス:提供する商品・サービスの特徴、競争優位性などを記述
- 販売戦略:販売方法、販路、価格設定などを記述
- 組織・体制:経営陣の経歴、従業員の役割分担などを記述
- 財務計画:売上予測、費用見積もり、資金繰り計画などを記述
資金調達方法の多様化
合同会社の資金調達は、自己資金だけでなく、日本政策金融公庫や信用保証協会による融資、クラウドファンディング、エンジェル投資家からの出資など、多様な方法を検討しましょう。
事業計画に基づき、必要な資金をどのように調達するか、返済計画も含めて具体的に計画を立てておくことが重要です。
資金調達先の選定にあたっては、それぞれのメリット・デメリットを比較検討し、自社の状況に最適な方法を選択しましょう。
例えば、融資の場合は金利負担が発生しますが、株式を発行する必要がないため、経営権を維持できます。
一方、出資の場合は株式を発行する必要があるため、経営権の一部を譲渡することになりますが、返済義務はありません。
資金調達方法 | メリット | デメリット |
---|---|---|
自己資金 | 返済不要、金利負担なし | 調達額に限界がある |
銀行融資 | 比較的低金利 | 審査が厳しい、担保が必要な場合も |
クラウドファンディング | 少額から調達可能、PR効果 | 手数料が発生、目標未達成の場合資金調達できない |
エンジェル投資家 | 事業への助言、ネットワーク活用 | 経営権の一部を譲渡する必要がある |
ベンチャーキャピタル | 多額の資金調達可能、事業成長支援 | 経営への介入、株式上場を目指す必要性 |
専門家への相談
合同会社設立に関する法務、税務、会計、社会保険などの手続きは複雑で、専門知識が必要です。
税理士、公認会計士、司法書士、行政書士などの専門家に相談することで、手続きのミスや漏れを防ぎ、スムーズな設立を実現できます。
また、事業計画の策定や資金調達についても、専門家のアドバイスを受けることで、より確実な経営基盤を築くことができます。
特に、税務面に関しては、合同会社特有の課税制度など、理解しておくべき事項が多いため、税理士への相談は必須と言えるでしょう。
顧問契約を結ぶことで、継続的なサポートを受けることも可能です。
費用対効果を考慮し、必要な専門家を選びましょう。
相談できる専門家
- 税理士:税務申告、税務相談、節税対策
- 公認会計士:財務諸表監査、会計コンサルティング
- 司法書士:会社設立登記、法律相談
- 行政書士:許認可申請、官公署への書類作成・提出
- 中小企業診断士:経営全般に関する相談、経営改善計画策定支援
これらの対策を講じることで、合同会社設立後に後悔するリスクを大幅に減らすことができます。
設立前にしっかりと準備を行い、成功へと繋げましょう。
まとめ
合同会社は設立の容易さや柔軟な運営など、多くのメリットを持つ一方で、赤字でも均等割がかかる、社会的信用度が低いとみなされる場合がある、株式会社への変更が煩雑など、いくつかの落とし穴が存在します。
特に、設立費用や出資の払い戻しに関するルールは、事前にしっかりと理解しておく必要があります。
電子定款認証を利用する場合でも、思わぬ落とし穴がある可能性も理解しておきましょう。
これらの落とし穴に陥り、「合同会社にして後悔した…」とならないためには、綿密な事業計画の策定が不可欠です。
事業の収益性や資金繰りを慎重に見積もり、均等割などの固定費を考慮した上で、本当に合同会社が最適な選択肢なのかを検討しましょう。
また、銀行融資や取引先との関係構築を円滑に進めるためにも、事業計画の内容を明確に伝えられるように準備しておくことが重要です。
必要に応じて、税理士や司法書士などの専門家に相談し、的確なアドバイスを受けることも有効です。
そうすることで、合同会社のメリットを最大限に活かし、事業の成功へと繋げることができるでしょう。