本記事では、株式会社を設立する際に必要な発起人・取締役・株主の人数要件を、最新の会社法や過去の法改正を踏まえて徹底解説します。
一人株主・一人取締役での設立可否から、複数人設立の実務フロー、定款認証や登記のポイント、家族や友人を役員にする際の注意点まで網羅。
これにより、設立準備の不安を解消し、スムーズに手続きを進める全体像が把握できます。
初心者でも分かりやすいよう、具体例を交えて解説します。
株式会社設立に必要な人数とは
株式会社を設立するには、会社法に定められた発起人や取締役、株主の最低人数要件を満たし、定款認証や設立登記を行う必要があります。
本項では、まず必要人数を一覧表で整理し、その後に各要件のポイントを詳しく解説します。
区分 | 最低人数 | 備考 |
---|---|---|
発起人 | 1名 | 発起設立・募集設立ともに共通 |
取締役 | 1名 | 原則1名以上。取締役会設置会社は3名以上 |
株主 | 1名 | 上限なし。定款で譲渡制限可能 |
設立時の発起人の人数要件
発起人とは、定款の作成および株式の引受けを行い、設立手続きを主導する者をいいます。
会社法では最低1名を要件としており、「一人会社」として発起人を兼任することも可能です。
複数名の発起人を選ぶ場合、手続き上はそれぞれの発起人が定款認証や設立登記に必要な書類に署名押印しますが、人数を増やしても法的負担が大幅に増えるわけではありません。
取締役や役員の人数規定
取締役は会社の業務執行機関を構成する役員で、会社法上最低1名必要です。
株主総会後の初回取締役会を設置しない場合は、一人取締役で構いません。
ただし、取締役会を設置する株式会社とする場合は、取締役を3名以上選任しなければなりません。
また、大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上)の場合は、監査役または監査役会の設置が義務付けられる点にも注意が必要です。
株主の人数について
株主は株式を保有する者で、設立時には最低1名の株主が必要です。
一人の発起人が設立時株主を兼ねることで、一人株主会社を成立させることが可能です。
株主の上限は法的に定められておらず、将来的に株式譲渡を通じて多数の株主を募ることもできます。
株式会社設立人数の法律上の根拠

会社法における要点
株式会社を設立する際の人数要件は、主に会社法で規定されており、発起人・取締役・株主のそれぞれに最低1名が求められます。
これにより、個人でも株式会社を設立できる「一人会社」が法的に認められています。
要件区分 | 該当条文 | 最低人数 |
---|---|---|
発起人 | 会社法第7条 | 1名以上 |
取締役 | 会社法第329条第1項 | 1名以上 |
株主 | 会社法第144条第1項 | 1名以上 |
一人株主・一人取締役でも設立できるのか
平成17年の会社法改正により、一人の発起人が株主と取締役を兼務できるようになりました。
これに伴い、定款の作成や登記申請では、発起人全員の自署・捺印があれば手続きが完了し、発起人会・株主総会の開催が不要となります(会社法第368条)。
この制度変更により、資本金1円からの設立や手続きの簡略化が進み、起業のハードルが大幅に下がっています。
過去の法改正とその背景
従来、株式会社の設立には発起人および株主がそれぞれ2名以上必要とされていました。
しかし、起業支援や国内中小企業の活性化を目的とした平成17年の会社法改正により、一人株式会社の解禁が実現しました。
項目 | 改正前 | 改正後 |
---|---|---|
発起人 | 2名以上 | 1名以上 |
株主 | 2名以上 | 1名以上 |
この改正により、個人事業主の法人化やスタートアップの設立が加速し、日本のビジネス環境の多様化に寄与しています。
実務でよくある株式会社設立の人数パターン

一人で株式会社を設立するケース
会社法の改正により、一人株主・一人取締役制度が認められています。
発起人、取締役、株主をすべて同一人物で兼務できるため、小規模事業や個人事業からの移行に最適です。
手続きの主な流れとポイントは以下のとおりです。
ステップ | 主な内容 | 留意点 |
---|---|---|
定款作成・認証 | 公証役場での定款認証。電子認証を利用すると印紙代が不要。 | 電子定款対応のソフトを用意し、事前にID・パスワード方式を設定。 |
資本金払込 | 発起人個人口座へ資本金を振込。最低額は1円から可能。 | 払込証明書(銀行の入金明細)の添付を忘れずに。 |
設立登記申請 | 法務局へ必要書類を提出。オンライン申請で登録免許税が軽減。 | 登記事項に誤りがあると再申請となるため、事前チェックを徹底。 |
登記完了後の届出 | 税務署・都道府県税事務所・労働基準監督署などへの各種届出。 | 設立後2か月以内が期限。遅延すると罰則の可能性。 |
メリットとしては、迅速な意思決定とコスト軽減が挙げられます。
一方、デメリットは代表者に負担が集中しやすい点です。
複数人で設立する場合の流れ
共同創業や複数の出資者がいる場合は、発起人会や株主間契約を踏まえた手続きを進めます。
役員構成や議決権比率をあらかじめ明確にしておくことで、設立後のトラブルを防止できます。
フェーズ | 実務作業 | ポイント |
---|---|---|
発起人会の開催 | 発起人同士で役員構成・資本金額・株式の割当を決定。 | 合意内容は議事録に記録し、定款に反映。 |
定款認証 | 各自の実印・印鑑証明を準備し、公証役場で認証。 | 発起人全員が立ち会うか、委任状を用意しておく。 |
資本金の払込・証明 | 各発起人が出資金を振込後、払込証明書を作成。 | 振込名義と出資契約書の記載を一致させる。 |
登記申請 | 代表取締役をはじめ、取締役・監査役など役員を登記。 | 議事録、定款、払込証明、印鑑届出書などをもれなく添付。 |
設立後の調整 | 株主名簿の作成、株式譲渡制限の定款規定確認。 | 将来の株主間トラブルを防ぐため、譲渡承認ルールを明確化。 |
複数人での設立では、株主間契約や議決権の取り扱いを事前に整理することで、設立後の組織運営がスムーズになります。
以上が、実務で多く採用される「一人設立」と「複数人設立」のパターンです。
事業規模や出資者間の合意関係を踏まえて最適な方法を選択してください。
人数以外に必要な設立要件

資本金の最低額
株式会社設立時の資本金には法定の最低額はありませんが、実務上は設立後の運転資金確保や対外的信用を考慮し、最低でも100万円以上を準備するケースが多いです。
資本金の額は設立後の資金調達や税務上の取り扱いにも影響するため、事業計画に見合った額を設定しましょう。
資本金額の目安 | 登録免許税 |
---|---|
1円~99万円 | 150,000円 |
100万円~ | 150,000円 |
本店所在地の決定
本店所在地は登記事項のひとつであり、設立後の登記簿謄本や法人税の申告書に必ず記載される重要情報です。
実在性と継続性を確保できる場所を選定しましょう。
実在性の要件
税務署や取引先が実際に確認できる住所であることが必要です。
賃貸オフィスを利用する場合は、契約書への法人名記載と使用権限の明示を忘れずに行いましょう。
バーチャルオフィス利用時の注意点
バーチャルオフィスを本店所在地にする場合、以下をチェックしてください。
- 法人名義の住所使用許可の有無
- 郵便物転送サービスの対応状況
- 所在地確認で問題とならないかの確認
定款認証や登記のポイント
株式会社設立には必ず定款の認証と設立登記が必要です。
ミスがあると再提出や追加費用が発生するため、要件を満たして正確に手続きを進めましょう。
定款認証手続きの流れ
公証人役場での認証手続きは、以下のステップで行います。
- 電子定款の作成(または紙定款の準備)
- 定款案を公証人に提出し、認証日程を調整
- 定款認証で公証人から署名・捺印を受領
登録免許税の計算と支払い
設立登記の際に納付する登録免許税は、資本金の額に応じて以下のいずれか高い方となります。
- 資本金の0.7%
- 最低額150,000円
例えば資本金200万円の場合、200万円×0.7%=14,000円ですが、最低額の150,000円を納める必要があります。
この記事では、会社設立の全体像を、準備段階から設立後の手続きまで、初めて起業する方にも理解できるように、会社設立の必要書…
設立人数に関連するよくある質問と注意点

設立後の役員や株主の増減
会社設立後でも、役員・株主の増員・減員は可能です。
ただし、増減に伴う手続きや登記申請を怠ると、法令違反や対外的信用失墜のリスクがあります。
変更の種類 | 主な手続き | 提出先・期限 |
---|---|---|
取締役の就任・辞任 | 株主総会(または取締役会)議事録、就任承諾書・辞任届 | 法務局への変更登記:2週間以内 |
監査役の選任・解任 | 株主総会議事録、同意書・解任決議書 | 法務局への変更登記:2週間以内 |
株主の譲渡・割当 | 株式譲渡契約書、株主名簿書換申請書 | 株主名簿への記載・変更 |
なお、定款で株式譲渡に対する譲渡制限を定めている場合、取締役会の承認などが別途必要となるため、定款をよく確認してください。
家族や友人を役員にしても良いのか
法律上、家族や友人を役員に任命することに制限はありません。
しかし、利益相反やガバナンスの観点から以下の点に注意しましょう。
- 利害関係の開示:取締役会での決議時に家族・友人との関係を明示
- 社内ガバナンス:独立社外取締役を設けるなど、客観性を担保
- 利益相反防止策:定款で特定の案件に関する議決要件を厳格化
これらを整備することで、社内外からの信頼を確保しやすくなります。
人数不足のリスクやトラブル例
設立時や運営中に必要な人数を下回ると、重大な法的トラブルや取引停止のリスクがあります。
リスク | 具体例 | 対策 |
---|---|---|
定足数不足 | 株主総会や取締役会が開催できず、重要決議が停滞 | 予備役員・株主を定款に明記し、早期補充手続きを規定 |
登記無効リスク | 設立登記時に発起人数が不足し、登記が却下 | 専門家(司法書士・行政書士)と事前確認 |
対外的信用低下 | 銀行口座開設や融資審査で人数不足を指摘 | メンバー確保と定款整備で内部統制を強化 |
上記のトラブルを防ぐためには、定款作成時点で将来的な人数変動を想定し、必要に応じて専門家へ相談することが重要です。
まとめ
株式会社は発起人1人、株主1人、取締役1人でも設立可能(2006年施行の会社法改正以降)、資本金最低額は不要で本店所在地を定め、定款認証・登記を行えば設立完了。
複数人設立や役員増減変更時は定款・株主総会対応と法務局届出が必須。
家族・友人を役員にする際は利益相反や登記漏れに注意し、専門家に相談すると安心です。
適切な人数管理で円滑な運営を目指しましょう。