資本金は多い方がいい?少ない方がいい?それぞれのメリット・デメリットを理解して、あなたの会社に最適な金額を決めよう。

会社の設立にあたり、資本金をいくらに設定すれば良いかお悩みではありませんか?

「多い方が信用力は高そうだけど、税金が心配」「少ない方が手軽だけど、融資で不利にならないか」など、判断に迷う点は多いでしょう。

本記事では、資本金が多い場合と少ない場合のメリット・デメリットを、信用力・税金・融資・許認可など多角的な視点から徹底比較します。

結論として、資本金額に絶対的な正解はなく、あなたの事業計画に合わせて決めるのが最適です。

この記事を読めば、あなたの会社に最適な資本金額を判断する基準が明確になります。

【結論】資本金は多い少ないに正解はない 会社の状況に合わせるのがベスト

会社設立を考えたとき、多くの経営者が最初に悩むのが「資本金をいくらに設定すべきか」という問題です。

インターネット上には「資本金は多い方が信用される」「いや、少ない方が税金面で有利だ」といった様々な情報が溢れており、混乱してしまうのも無理はありません。
しかし、結論から言えば、資本金の額に絶対的な正解はありません。

あなたの会社がこれからどのような事業を展開し、どのような成長を目指すのか、その状況や事業計画に合わせて最適な金額を決めることが最も重要です。

2006年の会社法施行により、理論上は資本金1円からでも株式会社を設立できるようになりました。
しかし、これはあくまで法律上の話です。

現実のビジネスでは、資本金は単なる設立時の手続きに必要な数字ではなく、会社の体力と信用力を示す重要な指標として機能します。

資本金が少なすぎれば、事業開始直後に資金が尽きてしまったり、取引先や金融機関からの信用を得られなかったりするリスクがあります。

一方で、多すぎても設立時の負担が増え、税制上のデメリットが生じる可能性も否定できません。

この章では、まず資本金が多い場合と少ない場合のメリット・デメリットの全体像を掴んでいただき、あなたの会社にとって最適な資本金額を考えるための基本的な視点について解説します。

メリット・デメリットの早見表で全体像を掴む

資本金が多い場合と少ない場合、それぞれにメリットとデメリットが存在します。

まずは以下の表で、その全体像を比較してみましょう。

詳細については、次章以降で一つひとつ詳しく解説していきます。

資本金が多い場合 (例: 1,000万円以上)資本金が少ない場合 (例: 100万円未満)
メリット・社会的信用度が高く、取引先や顧客に安心感を与える
・金融機関からの融資審査で有利に働く
・建設業などの許認可が取得しやすくなる
・初期の資金繰りに余裕が生まれ、事業が安定しやすい
・設立時の自己資金の負担が軽い
・登録免許税などの設立費用を抑えられる
・資本金1,000万円未満なら消費税が最大2年間免除される
・法人住民税の均等割が最低額に抑えられる
デメリット・設立時に多額の自己資金が必要になる
・資本金の額に応じて登録免許税が高くなる
・資本金1,000万円以上だと初年度から消費税の課税事業者になる
・資本金の増減(増資・減資)には法的な手続きが必要で手間がかかる
・社会的信用度が低く見られがちで、新規取引で不利になることがある
・融資審査で不利になる、または希望額の融資を受けられない可能性がある
・事業開始後すぐに運転資金が不足(資金ショート)するリスクが高い
・赤字が続くと債務超過に陥りやすい

あなたの会社に最適な資本金額を決める3つの視点

では、具体的に自社の資本金をいくらに設定すれば良いのでしょうか。

その答えを導き出すために、以下の3つの視点から検討することをおすすめします。

視点1:事業が軌道に乗るまでの運転資金を確保できているか

資本金の最も重要な役割は、会社設立直後の運転資金です。
事業を開始しても、すぐに売上が立って入金されるとは限りません。
売上が安定するまでの間、家賃、人件費、仕入れ費用、広告宣伝費などの支払いは待ってくれません。
これらの支払いが滞れば、事業は立ち行かなくなってしまいます。

一つの目安として、「設立時の初期費用(事務所契約費、備品購入費など)+最低3ヶ月分、できれば6ヶ月分の運転資金」を資本金として用意できるのが理想的です。
まずはご自身の事業計画を元に、月々の固定費や変動費を算出し、必要な運転資金がいくらになるかシミュレーションしてみましょう。
これが、資本金額を決める上での最も基本的で現実的な基準となります。

視点2:融資や許認可の要件を満たしているか

創業時に融資を受けたい、あるいは特定の許認可が必要な事業を始めたいと考えている場合、資本金の額がその可否を左右することがあります。

例えば、日本政策金融公庫の「新創業融資制度」を利用する場合、資本金の額が直接的な要件になっているわけではありませんが、「創業資金総額の10分の1以上の自己資金」が要件とされています。
この自己資金には資本金も含まれるため、資本金額は融資審査における重要な判断材料の一つです。
一般的に、融資希望額の3分の1から2分の1程度の自己資金(資本金)があると、審査に通りやすいと言われています。

また、建設業(一般建設業許可で500万円以上の自己資本)、人材派遣業(2,000万円以上の資産総額)など、業種によっては許認可の取得要件として一定額以上の資本金(または自己資本、資産総額)が定められています。
これらの事業を始める場合は、必ず許認可の要件を確認し、それを満たす資本金額を設定する必要があります。

視点3:税制上のメリットを最大限に活用できるか

資本金の額は、法人税や消費税などの税負担にも影響を与えます。
特に重要なのが「資本金1,000万円の壁」です。

資本金を1,000万円未満に設定すると、設立から最大2年間、消費税の納税が免除される可能性があります(※特定期間の課税売上高など他の要件あり)。
これは、設立間もない企業にとって非常に大きなメリットです。
また、法人住民税の「均等割」という税金は、資本金の額と従業員数によって税額が変動します。
資本金が1,000万円以下であれば、この均等割を最低額(多くの自治体で年間7万円)に抑えることができます。

このように、資本金の額は会社の信用力、資金繰り、そして税金という複数の要素に深く関わってきます。
どれか一つだけを重視するのではなく、ご自身の事業計画や将来のビジョンに合わせて総合的に判断し、最適なバランスを見つけることが、後悔しない資本金額設定の鍵となるのです。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

資本金が多いメリット・デメリットを徹底比較

会社の設立を考える際、多くの人が悩むのが「資本金をいくらに設定するか」という問題です。

一般的に、資本金は多い方が「しっかりした会社」という印象を与えやすいですが、本当にそうでしょうか。

実は、資本金を多く設定することにはメリットだけでなく、見過ごせないデメリットも存在します。

ここでは、資本金が多い場合のメリットとデメリットを多角的に比較し、あなたの会社にとって最適な判断ができるよう詳しく解説します。

まずはメリットから見ていきましょう。

メリット1 会社の信用力アップにつながる

資本金が多い最大のメリットは、会社の社会的信用力が高まることです。

資本金は、会社の体力や事業に対する経営者の本気度を示す客観的な指標として、外部から評価される重要な要素となります。

例えば、新しい取引先と契約を結ぶ際、相手企業は与信調査の一環として、あなたの会社の登記事項証明書(登記簿謄本)を確認することがあります。
その際に記載されている資本金額が潤沢であれば、「この会社は十分な資金力があり、支払い能力も高いだろう」「事業を継続していく体力があるだろう」と判断され、安心して取引を開始できる材料になります。

特に、大手企業との取引を考えている場合、一定以上の資本金がなければ取引の土台にすら乗れないケースも少なくありません。

また、会社のウェブサイトやパンフレットに資本金額を記載することで、顧客や求職者に対しても安心感と信頼性をアピールできます。

このように、資本金の額は、あらゆるステークホルダーからの信頼獲得に直結するのです。

メリット2 融資や許認可で有利になる

事業を拡大していく上で、金融機関からの融資や特定の事業に必要な許認可の取得は避けて通れない道です。

資本金が多いことは、これらの場面で大きなアドバンテージとなります。

融資審査における有利性

金融機関が融資を審査する際、最も重視するポイントの一つが「自己資金」です。
資本金は、この自己資金の中核をなすものであり、返済義務のない安定した資金と見なされます。
日本政策金融公庫の創業融資などでは、自己資金の額が融資可能額の上限に影響を与えることが多く、資本金が多ければ多いほど、より大きな金額の融資を引き出せる可能性が高まります。
潤沢な資本金は、会社の財務基盤が安定していることの証明であり、「この会社に融資しても、計画通りに事業を遂行し、きちんと返済してくれるだろう」という金融機関からの信頼につながるのです。

許認可取得の要件クリア

事業内容によっては、行政から許認可を得なければ開業できないものがあります。
そして、それらの許認可の中には、取得要件として一定額以上の財産的基礎(資本金や自己資本など)が定められているものがあります。

  • 建設業許可(一般):500万円以上の自己資本
  • 労働者派遣事業許可:資産総額から負債総額を引いた額が2,000万円以上(かつ、現預金が1,500万円以上)
  • 一般貨物自動車運送事業:事業開始に要する資金のうち、自己資金が一定割合以上必要

これらの事業を始めたい場合、資本金を要件以上に設定しておくことで、スムーズに許認可を取得し、事業をスタートさせることができます。

デメリット1 設立時の負担と税金が増加する

メリットがある一方で、資本金を多く設定することには金銭的な負担が伴います。
特に、設立時と設立後の税金面でのデメリットは必ず理解しておく必要があります。

設立時の資金調達の負担

当然ですが、資本金は実際に払い込む必要があるお金です。
例えば資本金を1,000万円に設定する場合、発起人は1,000万円の現金を口座に用意しなければなりません。
自己資金だけでまかなえない場合は、親族から借り入れるなど、設立時の資金調達のハードルが高くなります。

設立後の税負担の増加

資本金の額は、設立後の税金額に直接影響します。
特に注意すべきなのが「資本金1,000万円」の壁です。

1. 消費税の納税義務
資本金が1,000万円未満の場合、原則として設立から最大2年間は消費税の納税が免除されます。
しかし、資本金が1,000万円以上の場合は、設立1期目から消費税の課税事業者となり、納税義務が発生します。
これは、売上が少ない設立当初において、資金繰りを圧迫する大きな要因となり得ます。

2. 法人住民税(均等割)の増加
法人住民税の「均等割」は、会社の利益が赤字であっても支払わなければならない税金です。
この均等割の額は、資本金の額と従業員数によって決まります。

資本金等の額年額
1,000万円以下7万円
1,000万円超 1億円以下18万円
1億円超 10億円以下29万円

上記のように、資本金が1,000万円を超えた途端に、均等割の額が2.5倍以上に跳ね上がります
事業計画を立てる際には、この税負担の増加も必ず計算に入れておく必要があります。

3. 登録免許税
会社設立時に法務局へ支払う登録免許税は、「資本金の額 × 0.7%」で計算されます。
この金額が15万円に満たない場合は、一律15万円となります。
つまり、資本金が約2,143万円までは登録免許税は15万円で変わりませんが、それを超えると税額が増加していくことになります。

デメリット2 柔軟な経営がしにくくなる場合も

一度設定した資本金は、会社の「憲法」ともいえる定款に記載される重要な事項です。
そのため、後から安易に変更することはできず、これが経営の足かせになる可能性があります。

最大の注意点は、資本金を減らす「減資」の手続きが非常に煩雑であることです。

業績の悪化などを理由に税負担を軽くするため資本金を減らしたいと思っても、減資を行うには、株主総会の特別決議(議決権の3分の2以上の賛成)や、官報での公告、債権者への個別催告といった複雑な債権者保護手続きが必要となります。

これには数ヶ月の時間と数十万円の費用がかかるため、現実的には容易ではありません。

また、多額の資本金を用意するために自分以外の第三者から多くの出資を受けた場合、その出資比率によっては経営の自由度が損なわれるリスクも考慮すべきです。

重要な経営判断を下す際に、他の株主の意向を汲む必要が出てきたり、最悪の場合、経営権をめぐる対立に発展したりする可能性もゼロではありません。

将来の事業展開を見据え、誰から、どれくらいの比率で出資を受けるのかは、資本金額を決めるのと同等に重要な経営判断と言えるでしょう。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

資本金が少ないメリット・デメリットを徹底比較

「まずは小さく始めたい」「初期費用をできるだけ抑えたい」と考える起業家にとって、少ない資本金で会社を設立できるのは大きな魅力です。
しかし、その手軽さの裏には見過ごせないデメリットも存在します。

ここでは、資本金を少なく設定した場合のメリットとデメリットを詳しく解説し、どのようなリスクがあるのかを明らかにします。

メリット1 手軽に会社設立ができる

資本金を少なくする最大のメリットは、なんといっても会社設立のハードルが格段に下がることです。

2006年の会社法施行により、最低資本金制度が撤廃され、理論上は資本金1円からでも株式会社や合同会社を設立できるようになりました。

これにより、多額の自己資金を用意できない方でも、法人格を取得してビジネスをスタートさせることが可能です。

事業のアイデアや情熱があれば、資金調達の壁に阻まれることなく、スピーディーに起業への一歩を踏み出せる点は、特にスタートアップや個人事業主からの法人成りにおいて大きなアドバンテージと言えるでしょう。

ただし、資本金の額に関わらず、定款認証手数料や登録免許税といった設立のための実費(株式会社で約20万円〜、合同会社で約6万円〜)は別途必要になるため、完全にゼロ円で設立できるわけではない点には注意が必要です。

メリット2 税負担を最小限に抑えられる

資本金の額は、法人にかかる税金に直接影響します。
特に資本金を1,000万円未満に設定することで、設立初期の税負担を大きく軽減できる可能性があります。

具体的には、以下の2つの税金でメリットを享受できます。

  1. 法人住民税(均等割)の軽減
    法人住民税の「均等割」は、会社の利益が赤字であっても支払わなければならない税金です。
    この金額は資本金の額と従業員数によって決まりますが、資本金が1,000万円以下の場合、多くの自治体で最低税額(年間7万円程度)に抑えられます。
  2. 消費税の納税免除
    原則として、資本金1,000万円未満で設立された法人は、設立1期目と2期目の消費税の納税が免除されます。
    売上にかかる消費税を納める必要がないため、会社のキャッシュフローに大きな余裕が生まれます。
    これは、事業がまだ軌道に乗っていない設立初期において、非常に大きなメリットです。

これらの税制上の優遇措置をまとめたのが以下の表です。

資本金額法人住民税(均等割)消費税(設立1・2期目)
1,000万円未満最低額(例:7万円)原則、免除
1,000万円以上増額(例:18万円~)原則、課税対象

※法人住民税の税額は自治体によって異なります。
※消費税の免除には、特定期間の課税売上高など他の要件もあります。

デメリット1 信用不足で取引に影響が出る可能性

資本金は、会社の財務的な体力や規模を示す指標の一つとして、外部から見られています。
そのため、資本金が極端に少ない場合、会社の信用力不足につながる恐れがあります。

例えば、資本金が1円や数万円といった金額だと、取引先から「経営基盤が脆弱で、すぐに倒産してしまうのではないか」「支払い能力に不安がある」といった懸念を抱かれかねません。
その結果、新規取引の契約が難しくなったり、掛け売り(後払い)を認めてもらえなかったりするなど、ビジネスチャンスを逃す原因となります。

特に、大手企業との取引や、建設業のように取引金額が大きくなる業種では、与信審査の段階で一定額以上の資本金を求められるケースが少なくありません。

また、金融機関からの融資審査や、優秀な人材を採用する際の求職者からの見え方においても、資本金の額が信頼性の判断材料となることを覚えておく必要があります。

デメリット2 資金ショートのリスクが高まる

資本金は、会社設立後の当面の運転資金として機能します。つまり、資本金が少ないということは、事業を動かすための手元資金が乏しい状態でスタートすることを意味します。

事業を開始しても、すぐに売上が入金されるとは限りません。売上が安定するまでの数ヶ月間は、オフィスの家賃、人件費、広告宣伝費、仕入れ費用など、支出が先行します。

この期間を乗り切るための資金が不足していると、売上は立っているのに支払いが間に合わない「黒字倒産」のような、資金ショートに陥るリスクが非常に高まります。

もちろん、社長個人からの「役員借入金」で資金を補填することも可能ですが、これはあくまで一時的な対策です。

貸借対照表(B/S)上では負債が増えることになり、自己資本比率が低下するため、金融機関からの評価が下がる一因にもなり得ます。

事業を安定的に継続させるためには、最低でも3ヶ月〜半年分の運転資金を見越した資本金を設定することが賢明です。

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【ケース別】最適な資本金額の考え方

会社の資本金をいくらに設定すべきか、その答えは事業の状況や将来の展望によって大きく異なります。

ここでは、具体的な3つのケースを取り上げ、それぞれに最適な資本金額の考え方を詳しく解説します。

あなたのビジネスモデルに最も近いケースを参考に、最適な金額を導き出しましょう。

ケース1 スモールビジネスや個人事業主からの法人成り

Webデザイナーやコンサルタント、小規模なECサイト運営など、比較的少ない初期投資で始められるスモールビジネスや、個人事業主から法人成りするケースでは、資本金を高額に設定する必要性は低いでしょう。

しかし、だからといって最低限の1円や数万円で設立するのはおすすめできません。
なぜなら、事業を継続するための「運転資金」がすぐに枯渇してしまうリスクがあるからです。

このケースで資本金額を決める際の基本的な考え方は、「会社の設立にかかる初期費用」と「事業が軌道に乗るまでの3ヶ月〜6ヶ月分の運転資金」を合計した金額を目安にすることです。

費用の種類内容の例
初期費用法人設立の登記費用、事務所の契約金、PCや備品の購入費など
運転資金事務所の家賃、人件費、水道光熱費、広告宣伝費、仕入れ費用など

例えば、初期費用が50万円、1ヶ月の運転資金が30万円かかる事業であれば、3ヶ月分の運転資金(90万円)と合わせて140万円程度を資本金として用意しておくと、当面の資金繰りに余裕が生まれます。

また、税金面でのメリットも考慮すべき重要なポイントです。

資本金を1,000万円未満に設定することで、原則として設立から最大2年間、消費税の納税が免除される可能性があります。
このメリットは、特に事業開始直後のキャッシュフローが厳しい時期において非常に大きいため、多くのスタートアップ企業が1,000万円未満で資本金を設定しています。

これらの点を総合的に考慮すると、スモールビジネスや法人成りの場合、100万円から300万円程度が現実的な資本金額の一つの目安となるでしょう。

ケース2 創業時から融資を考えている場合

飲食店や美容室の開業、製造業など、初期の設備投資にまとまった資金が必要で、創業時から金融機関からの融資を検討している場合は、資本金の額が非常に重要な意味を持ちます。

なぜなら、資本金は融資審査における「自己資金」の証明であり、事業への本気度を示す客観的な指標見なされるからです。

金融機関、特に日本政策金融公庫の創業融資などでは、「自己資金をどれだけ準備できているか」が審査の重要なポイントとなります。

自己資金が少ないと、「計画性が乏しい」「事業に対する熱意が低い」と判断され、融資を受けられなかったり、希望額から大幅に減額されたりする可能性が高まります。

一般的に、融資希望額の3分の1から2分の1程度を資本金(自己資金)として用意するのが理想とされています。

例えば、900万円の融資を受けたいのであれば、少なくとも300万円程度の資本金を用意しておくことで、融資審査を有利に進められる可能性が高まります。

融資希望額推奨される資本金(自己資金)の目安
300万円100万円〜150万円
600万円200万円〜300万円
1,000万円330万円〜500万円

もちろん、事業計画の質や経営者の経歴なども総合的に評価されますが、十分な資本金を用意することは、金融機関に対して「この事業はしっかりと計画されており、成功する見込みが高い」という強力なメッセージを送ることにつながります。

創業融資を成功させるための第一歩として、資本金の額を戦略的に決定しましょう。

ケース3 建設業など許認可が必要な事業を始める場合

建設業、人材派遣業、不動産業など、事業を開始するために国や都道府県から「許認可」を得る必要がある業種では、資本金の額が事業を始められるかどうかを直接左右します。
これらの許認可には、多くの場合「財産的基礎要件」や「資産要件」と呼ばれる、一定額以上の純資産を保有していることが求められるためです。

この要件を満たしていることを証明する最も分かりやすい方法が、資本金の額を示すことです。

許認可事業を始める場合、法律で定められた財産的基礎要件をクリアできる金額を資本金として設定する必要があると覚えておきましょう。

以下に、主な許認可事業とその資産要件の例を挙げます。

許認可の種類主な資産要件
一般建設業許可自己資本の額が500万円以上であること。
特定建設業許可資本金が2,000万円以上、かつ自己資本が4,000万円以上であること。
一般労働者派遣事業許可基準資産額(資産総額-負債総額)が2,000万円 × 事業所数以上であること。
有料職業紹介事業許可基準資産額が500万円 × 事業所数以上であること。

注意点として、要件は「資本金」そのものではなく、「自己資本」や「基準資産額(純資産)」で定められていることが多いです。

資本金は自己資本の一部であるため、要件額ギリギリではなく、少し余裕を持たせた金額を資本金として設定するのが安全です。

例えば、一般建設業許可を取得したい場合、資本金を500万円以上に設定すれば、この要件をクリアできます。

自社が始める事業に必要な許認可と、その資産要件を事前に必ず確認し、それを満たす資本金額を準備しましょう。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

資本金1円での会社設立は本当におすすめできない理由

2006年の会社法改正により、最低資本金制度が撤廃され、法律上は資本金1円でも株式会社を設立できるようになりました。
この手軽さから「まずは1円で会社を作ろう」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、法律上可能であることと、事業を現実的に運営できることは全く別の問題です。

安易に資本金1円で会社を設立すると、事業開始直後から深刻な問題に直面する可能性が極めて高くなります。

ここでは、資本金1円での会社設立がなぜおすすめできないのか、その具体的な理由を詳しく解説します。

資本金1円での設立がもたらす主なリスクは、以下の2点に集約されます。

リスクの種類具体的な内容と影響
運転資金の問題事業開始に必要な初期費用(登記費用、備品購入費など)すら賄えず、設立直後から資金が枯渇します。売上が入金されるまでの数ヶ月間を乗り切ることができず、事業が立ち行かなくなる危険性があります。
信用の問題事業継続性が著しく低いと判断され、金融機関での法人口座開設を断られるケースが多発します。また、取引先からも信頼を得にくく、ビジネスチャンスを失う原因となります。

現実的な運転資金の問題

資本金の最も重要な役割の一つは、会社設立直後の運転資金となることです。

事業を開始すると、売上が安定して入金されるようになるまでには、通常数ヶ月の期間を要します。
その間も、事務所の家賃、人件費、仕入れ費用、広告宣伝費、通信費など、様々な経費が継続的に発生します。

資本金は、この売上がない期間の事業活動を支える「会社の体力」そのものなのです。

資本金が1円の場合、会社の資産は文字通り1円しかありません。会社設立に必要な登録免許税や定款認証手数料といった諸費用(株式会社の場合で約20万円〜)すら、会社の資金では支払うことができません。

結果として、これらの費用は役員(社長個人)が立て替えることになり、「役員借入金」という負債が発生します。

つまり、会社を設立した瞬間に「資産1円、負債20万円」という債務超過の状態に陥ってしまうのです。
このような財務状況では、事業の継続は極めて困難と言わざるを得ません。

法人口座の開設が難しくなる

事業を運営する上で、法人口座は不可欠です。
しかし、近年、マネー・ローンダリングや詐欺といった犯罪への対策として、金融機関は法人口座の開設審査を非常に厳格化しています。

審査の際、金融機関は提出された事業計画書や登記簿謄本などから、事業の実態や継続性を慎重に判断します。

その中で資本金の額は、「その会社が本気で事業を行う意思と体力があるか」を測る重要な指標と見なされます。

資本金が1円の会社は、ペーパーカンパニーや事業実態のないダミー会社であると疑われやすく、「事業継続性に著しい懸念がある」と判断されて口座開設を断られるケースが後を絶ちません。

特に、信頼性の高いメガバンクや地方銀行では、この傾向が顕著です。法人口座がなければ、取引先からの入金を受けたり、経費の支払いをしたりといった基本的な業務に支障をきたし、社会的な信用も得られません。

結果として、ビジネスの機会を大きく損失してしまうリスクがあるのです。

手軽さという目先のメリットに惑わされず、事業を継続させるために必要な資金はいくらかを現実的に考え、適切な資本金額を設定することが成功への第一歩となります。

会社設立の代行費用実質0円、個人事業主とのメリットデメリット流れと手順

資本金を決める前に知っておきたい注意点

資本金の額を決めるプロセスは、会社の未来を左右する重要なステップです。
しかし、この段階で多くの起業家が陥りやすい落とし穴が存在します。

特に「見せ金」や「自己資金との混同」は、後々の経営に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、正しい知識を身につけておくことが不可欠です。

ここでは、資本金を決める前に必ず押さえておきたい2つの重要な注意点を詳しく解説します。

見せ金は絶対NG

会社設立の手続きを形式的に整えるためだけに、一時的に他人からお金を借りて資本金があるように見せかける行為を「見せ金」と呼びます。

具体的には、第三者から借りたお金を発起人の口座に振り込み、払込証明書を取得した後、すぐにそのお金を引き出して返済するようなケースです。

手元に資金がなくても資本金を大きく見せられるため、安易に考えてしまう方もいるかもしれませんが、見せ金は会社法で明確に禁止されている違法行為です。

見せ金が発覚した場合、以下のような厳しいペナルティが科されるリスクがあります。

  • 刑事罰の対象になる可能性
    会社法第965条の「払込偽装罪」に該当し、「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、またはその両方」が科される可能性があります。これは非常に重い罪です。
  • 会社設立が無効になるリスク
    見せ金による設立登記は、法的に無効と判断されることがあります。会社の存在自体が根本から覆されることになり、すべての取引が無効になるなど、計り知れない損害につながります。
  • 金融機関からの信用失墜
    融資を申し込む際、金融機関は必ず通帳の履歴を確認します。設立直後に資本金と同額の不自然な出金があれば、見せ金は容易に発覚します。一度でも不正が発覚すれば、その金融機関からは二度と融資を受けられなくなる可能性が極めて高いでしょう。

結局のところ、見せ金で資本金を大きく見せても、実際に事業で使えるお金が増えるわけではありません。

むしろ、発覚した際のリスクは会社の存続を揺るがすほど大きいものです。

健全な会社経営のためにも、見せ金には絶対に手を出さないでください。

資本金と自己資金は違う

会社設立を考える際、「資本金」と「自己資金」という言葉を混同してしまうケースがよく見られます。

特に創業融資を検討している場合、この2つの違いを正確に理解しておくことが極めて重要です。

結論から言うと、資本金は自己資金の一部であり、イコールではありません

それぞれの言葉が持つ意味と役割を、以下の表で確認してみましょう。

項目資本金自己資金
定義株主が会社に対して出資したお金。会社の基礎財産となる。事業を始めるために創業者自身が準備したお金の総称。
登記法務局への登記が必須。登記事項証明書に金額が記載される。登記は不要。個人的に管理するお金。
使途会社の事業活動(仕入れ、経費支払いなど)のために使う。資本金の原資となるほか、設立後の運転資金にも充てられる。
証明方法払込証明書(発起人の個人通帳のコピーなど)で証明する。個人の通帳履歴などで、計画的に貯めてきた経緯を証明する。
融資審査での役割会社の体力や規模を示す指標の一つ。創業への本気度や計画性を示す最重要指標。融資可能額に直結する。

日本政策金融公庫などの創業融資では、「自己資金をどれだけ準備できたか」が審査の重要なポイントになります。

なぜなら、金融機関は「事業のためにコツコツとお金を貯めてきた」という事実をもって、創業者の事業に対する熱意や計画性を評価するからです。

一時的に親族から借りたお金などは、原則として自己資金とは見なされません。

例えば、あなたが自己資金として500万円を準備したとします。この500万円全額を資本金にすることもできますし、資本金を300万円に設定し、残りの200万円を手元資金(役員借入金として会社に貸し付けるなど)として残しておくことも可能です。

融資を成功させるためには、資本金の額そのものよりも、その元手となる自己資金をいかに計画的に準備し、その形成過程を通帳などで明確に証明できるかが鍵となります。

資本金の額を決める際は、必ず自己資金全体のバランスを考慮して判断するようにしましょう。

まとめ

資本金の額に唯一の正解はなく、会社の状況に合わせて決めることが結論です。

資本金を多くすれば社会的信用度は高まりますが、税負担が増えるデメリットがあります。

逆に少なくすれば設立は手軽ですが、資金ショートのリスクや信用不足に陥る可能性があります。

特に資本金1円での設立は、運転資金の確保や法人口座の開設が困難になるため現実的ではありません。

ご自身の事業計画や3〜6ヶ月分の運転資金を目安に、融資や許認可の要件も踏まえ、最適な資本金額を慎重に決定しましょう。

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