会社設立の株価の決め方を完全解説|失敗しない適正価格と発行株式数の基準

会社設立時の株価設定は、将来の資金調達や事業承継にも影響する重要な要素です。

本記事では、資本金の額から逆算して株価と発行株式数を決める具体的な3ステップを解説します。

1株1万円が一般的な理由から、発起人間の税務リスク、増資を見据えた株式数の決め方まで、失敗しないためのポイントを網羅。

この記事を読めば、後悔しない最適な株価設定のすべてがわかります。

会社設立時に株価を決める理由と基本の考え方

会社を設立する際、多くの起業家が「資本金をいくらにするか」に注目しがちですが、それと同じくらい重要なのが「1株あたりの価格(株価)」と「発行する株式数」です。
これらは会社の根幹をなす要素であり、設立時に適切に設定することが将来の経営に大きな影響を与えます。

まずは、なぜ株価を決める必要があるのか、その基本となる考え方から理解を深めていきましょう。

資本金と株価と発行株式数の関係性

会社設立における「資本金」「株価」「発行株式数」は、それぞれ独立したものではなく、互いに密接に関連しています。
この3つの関係は、以下のシンプルな計算式で表すことができます。

資本金の額 = 1株あたりの価格(株価) × 発行株式数

つまり、この3つのうち2つの数値を決めれば、残りの1つは自動的に計算されます。

例えば、資本金を300万円に設定した場合、株価と発行株式数の組み合わせには以下のようなパターンが考えられます。

資本金の額1株あたりの価格(株価)発行株式数備考
300万円1万円300株計算がしやすく一般的な設定
300万円5万円60株旧商法の名残で選択されることもある
300万円1,000円3,000株株式数を多くしたい場合
300万円500円6,000株ストックオプションなどを想定する場合

このように、どの組み合わせを選択するかは自由に決められますが、それぞれの選択が将来の資本政策に影響を与えるため、安易に決めるべきではありません。

まずはこの基本的な関係性をしっかりと押さえることが、適切な株価設定への第一歩となります。

なぜ会社設立時に株価の決定が重要なのか

会社設立時の株価決定は、単なる計算上の手続きではありません。
これには、会社の根幹に関わるいくつかの重要な意味があります。

第一に、株価と発行株式数は、出資者(発起人)の会社に対する権利(持分比率)を明確にする役割を果たします。

例えば、Aさんが200万円、Bさんが100万円を出資して資本金300万円の会社を設立するケースを考えてみましょう。
もし1株1万円に設定すれば、Aさんは200株、Bさんは100株を保有することになり、持分比率はAさんが3分の2、Bさんが3分の1と明確になります。
この持分比率は、株主総会での議決権の割合に直結し、会社の重要な意思決定に影響を与えるため、極めて重要です。

第二に、設立時の株価はその時点での「会社の価値の基準」となります。
もちろん、設立時点では事業実績がないため、株価に客観的な企業価値が反映されているわけではありません。
しかし、この最初の株価が、将来の増資やストックオプションの発行、M&Aといったあらゆる資本政策の出発点となります。

設立時に設定した株価が不適切だと、後の資金調達や組織再編の際に手続きが煩雑になったり、予期せぬ税務上の問題が発生したりするリスクがあります。

設立後の資金調達や事業承継に与える影響

設立時の株価設定は、その後の会社の成長ステージにおいても様々な影響を及ぼします。

例えば、事業が成長し、外部の投資家(ベンチャーキャピタルなど)から資金調達(増資)を行う場面を想像してください。
この際、会社の事業価値を評価して新たな株価(時価)が算定され、その価格で新しい株式が発行されます。

設立時の株価や発行株式数が、この新しい株価算定や投資家との交渉における基礎情報の一つとなります。

発行株式数が極端に少ないと、少しの増資で既存株主の持分比率が大きく変動してしまう可能性もあります。

また、将来の事業承継においても、株式は重要な役割を担います。

経営者が親族や従業員に会社を引き継ぐ際には、株式の譲渡や相続が発生します。
このとき、株式の評価額が税額(贈与税や相続税)に直結します。発行株式数が少ないと、複数の後継者に株式を円滑に分配することが難しくなるケースも考えられます。

さらに、従業員のモチベーション向上のためにストックオプションを発行する場合、その行使価格は株価を基準に設定されます。

設立時の株式設計が、魅力的で実行しやすいストックオプション制度を構築できるかどうかに影響を与えるのです。

このように、会社設立時の株価設定は、単なる初期手続きではなく、会社の未来を左右する重要な経営判断です。

創業者間の公平性を保ち、将来の成長戦略を円滑に進めるためにも、慎重に検討する必要があるのです。

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会社設立時の株価と発行株式数の決め方 3ステップ

会社設立における株価や発行株式数の決定は、一見すると複雑に思えるかもしれません。
しかし、実際には論理的な3つのステップに沿って進めることで、誰でも適切に決めることができます。

ここでは、その具体的な手順を一つずつ丁寧に解説します。
このステップを理解すれば、あなたの会社に最適な資本構成をスムーズに決定できるでしょう。

ステップ1 会社の資本金の額を決定する

株価や株式数を決める最初のステップは、会社の土台となる「資本金」の額を決定することです。

資本金は、事業を始めるための元手となる資金であり、会社の体力や社会的信用度を示す重要な指標となります。

法律上は1円からでも会社を設立できますが、以下の点を考慮して現実的な金額を設定することが重要です。

  • 事業の初期費用と運転資金:会社設立直後はすぐに売上が立つとは限りません。事務所の賃料、人件費、仕入れ費用、広告宣伝費など、設立後少なくとも3ヶ月から6ヶ月程度は事業を継続できるだけの運転資金を資本金として用意するのが一般的です。
  • 許認可の要件:特定の事業(例:建設業、労働者派遣事業など)を行う場合、許認可の取得要件として最低資本金額が定められていることがあります。ご自身の事業に必要な許認可を確認し、その基準を満たす金額を設定する必要があります。
  • 金融機関や取引先からの信用度:資本金の額は、登記事項証明書(登記簿謄本)で誰でも確認できます。資本金が多いほど会社の財務基盤が安定していると見なされ、金融機関からの融資を受けやすくなったり、大手企業との取引が有利に進んだりする傾向があります。
  • 消費税の納税義務:資本金を1,000万円未満に設定すると、原則として設立から最大2事業年度、消費税の納税が免除されるという大きなメリットがあります。多くのスタートアップ企業が資本金を1,000万円未満にするのは、この税制上の優遇措置を活用するためです。

ステップ2 1株あたりの価格を決める

資本金の額が決まったら、次に「1株あたりの価格(払込金額)」を決定します。
この価格は、会社設立時においては法律上の決まりはなく、発起人が自由に設定することができます

1株1円でも10万円でも問題ありません。

しかし、実務上は計算のしやすさや管理の観点から、キリの良い数字が選ばれることがほとんどです。特に、「1万円」または「5万円」に設定するケースが一般的です。
これは、かつての商法で額面株式の価格が5万円以上と定められていた名残や、計算がしやすいという実用的な理由によります。

この段階で決める株価は、上場企業の株価のように市場で日々変動するものではなく、あくまで会社設立時に出資者(発起人)が株式を取得するために払い込む金額です。

将来の増資やストックオプションの発行なども見据え、扱いやすい価格に設定しておきましょう。

後の章で詳しく解説しますが、極端に低すぎたり高すぎたりする価格設定にはメリット・デメリットがあるため、慎重に検討することが大切です。

ステップ3 発行する株式の総数を計算する

資本金の額と1株あたりの価格が決まれば、最後のステップとして会社が設立時に発行する株式の総数を計算します。

計算方法は非常にシンプルで、以下の式で求められます。

発行する株式の総数 = 資本金の額 ÷ 1株あたりの価格

この計算によって算出された株式数が、会社の「設立時発行株式数」となります。

具体的な計算例をいくつか見てみましょう。

ケース資本金の額1株あたりの価格発行する株式の総数
例13,000,000円10,000円300株
例25,000,000円50,000円100株
例31,000,000円1,000円1,000株

もし発起人が複数いる場合は、それぞれの出資額に応じて株式を割り当て、持株比率を決定します

持株比率は、株主総会での議決権の割合に直結するため、会社の経営権を誰がどの程度持つかを決める上で極めて重要です。

例えば、資本金500万円、1株あたりの価格を5万円に設定した場合、発行株式総数は100株となります。
この時、発起人Aが300万円、発起人Bが200万円を出資するケースを考えてみましょう。

  • 発起人Aの保有株式数:300万円 ÷ 5万円/株 = 60株(持株比率60%)
  • 発起人Bの保有株式数:200万円 ÷ 5万円/株 = 40株(持株比率40%)

このように、3つのステップを踏むことで、資本金、株価、発行株式数、そして発起人ごとの持株比率まで、すべてを論理的に決定することができます。

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1株あたりの価格はいくらが適切か 相場と決め方の基準

会社設立時、1株あたりの価格(株価)をいくらに設定すべきか、法律上の明確な決まりはありません。
しかし、実務上は「相場」とされる価格帯が存在し、価格設定によって将来の経営に影響が及ぶため、慎重な判断が求められます。

ここでは、1株あたりの価格の適切な決め方と、その基準について詳しく解説します。

一般的な価格設定 1万円か5万円が多い理由

多くの会社では、設立時の1株あたりの価格を1万円または5万円に設定するケースが一般的です。
これには、主に以下の3つの理由があります。

  1. 計算のしやすさ
    資本金と発行株式数の計算が非常にシンプルになります。例えば、資本金を300万円とする場合、1株1万円なら300株、1株5万円なら60株と、キリの良い数字で管理できます。創業者複数人で出資比率を分ける際にも、直感的で分かりやすいのが大きなメリットです。
  2. 旧商法の名残
    2006年に施行された会社法以前の「旧商法」では、「額面株式」という制度があり、1株あたりの純資産額は5万円以上でなければならないという規制がありました。この名残から、現在でも1株5万円という設定に馴染みがあり、多くの起業家や専門家が採用しています。
  3. 社会的な印象
    株価は会社の信用度に直接影響するわけではありませんが、あまりに低い価格だと、会社の規模や安定性について詳しくない取引先などから、実態とは異なる印象を持たれる可能性もゼロではありません。1万円や5万円といった一般的な価格設定は、無用な誤解を避ける上でも無難な選択肢と言えます。

これらの理由から、特に強いこだわりや明確な戦略がない場合は、1株1万円もしくは5万円を基準に検討するのがおすすめです。

1円など低価格にするメリットとデメリット

近年、ITベンチャーなどを中心に、1株あたりの価格を1円や100円といった低価格に設定するケースも見られます。

低価格な株価設定にはメリットがある一方で、デメリットも存在するため、両方を理解した上で判断することが重要です。

メリットデメリット
株式の柔軟性1株あたりの価値が低いため、将来のストックオプション発行や従業員への株式譲渡、少額の第三者割当増資など、株式を細かく分割して配分しやすいです。これにより、資本政策の自由度が高まります。増資の際に大量の株式を発行する必要があり、既存株主の持株比率が下がりやすくなります(希薄化)。また、発行株式数が膨大になり、株主名簿の管理が煩雑になる可能性があります。
出資のハードル1円から出資が可能になるため、多くの人から少しずつ資金を集めるクラウドファンディングのような資金調達も考えられます。1株の価値が低いため、出資者にとっての価値実感が薄れる可能性があります。また、株式譲渡の際に1株あたりの計算が細かくなりすぎる場合があります。
心理的な印象先進的なイメージや、株式の流動性を重視する姿勢を示すことができます。「1株1円の会社」という響きが、伝統的な業界の取引先や金融機関に対して、軽薄な印象や不安定な印象を与えてしまうリスクが考えられます。

このように、低価格な株価設定は、将来的に多くの株主を迎えることや、柔軟な資本政策を計画している企業にとっては有効な選択肢となり得ます。
しかし、管理の手間や外部からの印象も考慮する必要があります。

株価を高く設定しすぎる場合の注意点

逆に、1株あたりの価格を10万円や100万円など、高く設定しすぎることにも注意が必要です。

株価を高く設定すると、以下のような問題が生じる可能性があります。

  • 株式の流動性が著しく低下する
    1株あたりの価格が高すぎると、株式の売買や譲渡が非常に困難になります。例えば、事業承継で後継者に少しずつ株式を譲渡したい場合や、相続で複数の相続人に株式を分割する場合に、1株単位での調整ができず、手続きが複雑化します。
  • 新たな出資者を見つけにくくなる
    将来、増資によって資金調達を行う際に、最低出資単位が高額になってしまいます。これにより、出資者の範囲が限定され、資金調達のハードルが格段に上がってしまう恐れがあります。
  • 共同経営者の参画が難しくなる
    会社設立後、新たなメンバーを共同創業者として迎え入れたい場合、高額な出資が求められるため、優秀な人材であっても参画をためらってしまう可能性があります。

以上のことから、1株あたりの価格は、高すぎず安すぎず、自社の事業計画や将来の資本政策を見据えた上で、柔軟性を保てる価格帯に設定することが極めて重要です。

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発行株式数は何株にすべきか 決め方のポイント

資本金と1株あたりの価格が決まれば、発行株式数は自動的に計算できます。
しかし、その数を決める際には、将来の会社経営を見据えた重要なポイントが3つあります。

創業者間の関係性、将来の資金調達、そして会社法上のルールです。
これらのポイントを理解せずに株式数を決めてしまうと、後々の経営に思わぬ支障をきたす可能性があります。

ここでは、失敗しない発行株式数の決め方を具体的に解説します。

創業者間の出資比率から株式数を決める方法

複数の創業者(発起人)で会社を設立する場合、発行株式数はそれぞれの出資比率と密接に関わってきます。
なぜなら、株式数に応じて議決権が与えられ、その持株比率が会社の意思決定における影響力に直結するからです。

例えば、資本金1,000万円、1株1万円で設立する場合、発行株式数は1,000株です。創業者Aが600万円、創業者Bが400万円を出資した場合、それぞれの保有株式数は以下のようになります。

  • 創業者A:600株(持株比率60%)
  • 創業者B:400株(持株比率40%)

この持株比率によって、株主総会でどのような決議を単独で可決できるかが変わってきます。

会社の重要な意思決定は株主総会で行われるため、持株比率は経営の安定性を左右する非常に重要な要素です。

議決権割合可能な決議の種類具体例
過半数(1/2超)普通決議役員の選任・解任、役員報酬の決定、決算の承認など
3分の2以上特別決議定款の変更、事業譲渡、会社の解散、合併・会社分割など

創業者間の出資額が割り切れない数字になる場合もあります。

例えば、3人で均等に出資する場合、発行株式数が100株だと1人あたり33.33…株となり、株式を割り当てられません。

株式は整数でなければならないため、このような場合は発行株式総数を300株や3,000株など、出資者数で割り切れる数に設定すると、公平な株式の配分が可能になります。

将来の増資やストックオプションを考慮する

会社設立時の発行株式数は、将来の事業拡大や人材確保の戦略にも影響を与えます。
特に「増資」と「ストックオプション」を計画している場合は、設立時点である程度の株式数を確保しておくことが重要です。

設立時の発行株式数が少なすぎると、以下のようなデメリットが生じる可能性があります。

  • 増資による持株比率の低下(希薄化)
    外部の投資家から資金調達(第三者割当増資など)を行う際、新たに株式を発行します。設立時の発行株式数が例えば100株しかない場合、新たに50株を発行するだけで創業者の持株比率は約66.7%まで大きく低下してしまいます。発行株式数を1,000株や10,000株のように多めに設定しておけば、増資時の持株比率のコントロールがしやすくなります。
  • ストックオプションの設計のしにくさ
    ストックオプションは、役員や従業員へのインセンティブとして、あらかじめ定められた価格で株式を購入できる権利を付与する制度です。将来の優秀な人材確保のために活用されますが、これも新株発行を伴います。将来のメンバーに付与する分を考慮して、ある程度まとまった株式数を設定しておくことで、柔軟な資本政策(資金調達や株主構成の計画)が可能になります。

こうした将来の展開を見据え、設立時の発行株式数は、細かく分割しやすい1,000株や10,000株といったキリの良い数字に設定するケースが一般的です。

発行可能株式総数とのバランスを考える

会社を設立する際には、定款に「発行可能株式総数」を定めなければなりません。
これは、その会社が将来的に発行できる株式の上限数のことです。

そして、設立時に発行する株式(設立時発行株式)は、この発行可能株式総数の範囲内でなければなりません。
両者のバランスは非常に重要です。

非公開会社(株式の譲渡に会社の承認が必要な会社)の場合、発行可能株式総数に法的な上限はありません。
しかし、だからといって無闇に大きな数字にすれば良いわけではありません。

実務上は、設立時発行株式数の10倍程度を発行可能株式総数として設定するケースが多く見られます
例えば、設立時に1,000株を発行する場合、発行可能株式総数を10,000株に設定しておく、といった具合です。

こうすることで、将来、株主総会の決議を経ずに取締役会の判断だけで機動的に増資を行うための「枠」を確保できます。
ただし、これは経営の自由度を高める一方で、創業者の知らないうちに株式が発行され、持株比率が低下するリスクもはらんでいます。

発行可能株式総数は、一度登記すると、変更するには株主総会の特別決議と変更登記手続きが必要となり、手間と費用(登録免許税3万円)がかかります。

設立時に、将来の資金調達計画をある程度見据えた上で、適切なバランスで設定することが肝心です。

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会社設立時の株価設定で失敗しないための注意点

会社設立時の株価や発行株式数の決定は、今後の会社経営の土台となる重要なプロセスです。

一度決めてしまうと後から変更するのが難しく、思わぬトラブルや税務リスクを招く可能性もあります。

ここでは、将来の失敗を防ぐために必ず押さえておくべき3つの重要な注意点を詳しく解説します。

発起人間で株価が違うと贈与税のリスクがある

会社設立時に複数人の発起人(出資者)がいる場合、全員が同じ株価(払込金額)で株式を引き受けることが大原則です。
もし特定の人物だけが著しく低い価格で株式を引き受けた場合、他の発起人から利益供与を受けたとみなされ、その差額に対して贈与税が課されるリスクがあります。

これは「みなし贈与」と呼ばれるもので、税務調査で指摘される可能性のある重大な問題です。

例えば、発起人Aが1株1万円で出資し、発起人Bが特別な理由なく1株1,000円で出資したとします。
この場合、BはAから1株あたり9,000円分の経済的利益を受けたと判断され、その総額が贈与税の課税対象となる恐れがあるのです。

このような事態を避けるためにも、設立時の株価は必ず全発起人で統一してください。

現物出資がある場合など、評価が複雑になるケースでは、事前に税理士などの専門家に相談し、適切な株価設定を行うことが不可欠です。

一度決めた株価や株式数は簡単に変更できない

会社設立時に定款に記載し、登記した発行済株式数や資本金の額は、会社の根幹をなす情報です。
そのため、後から「やっぱり変更したい」と思っても、簡単な手続きでは変更できません。

これらの情報を変更するには、株主総会での特別決議(議決権の3分の2以上の賛成が必要)を経た上で、法務局での変更登記手続きが必要となります。
この手続きには、登録免許税などの費用がかかるだけでなく、司法書士への依頼費用や時間も要します。

具体的にどのような手続きが必要になるか、主な例を下の表にまとめました。

変更内容主な手続き影響・注意点
増資(新株発行)株主総会の決議、変更登記資本金を増やせますが、既存株主の持株比率が低下する「希薄化」が起こります。
株式分割株主総会の決議、変更登記発行済株式数が増え、1株あたりの価格が下がります。株の流動性を高めたい場合などに行われます。
株式併合株主総会特別決議、変更登記複数の株式を1株に統合します。発行済株式数が減り、1株あたりの価格が上がります。
減資株主総会特別決議、債権者保護手続、変更登記資本金の額を減少させます。手続きが非常に煩雑で、時間とコストがかかります。

このように、設立後の変更は経営上の大きな負担となり得ます。
そのため、設立段階で将来の事業計画や資金調達計画をある程度見据え、慎重に株価と発行株式数を決定することが、将来の無駄なコストや手間を省く上で極めて重要です。

種類株式を発行する場合の株価の決め方

会社法では、一般的な「普通株式」とは別に、権利の内容が異なる「種類株式」を発行することが認められています。
例えば、以下のような種類株式があります。

  • 配当優先株式: 普通株式に比べて優先的に配当を受け取れる株式
  • 議決権制限株式: 株主総会での議決権が制限されている、または全くない株式
  • 取得請求権付株式: 株主が会社に対して株式の買い取りを請求できる権利が付いた株式

ベンチャー企業が投資家からの出資を受け入れる際などに活用される種類株式ですが、その株価設定は普通株式よりも格段に複雑になります。
なぜなら、付与された権利の内容によって株式の価値が変動するため、その価値を合理的に算定する必要があるからです。

例えば、配当を優先的に受け取れる権利には経済的な価値があるため、配当優先株式の株価は普通株式よりも高く設定されるのが一般的です。
一方で、議決権が制限されている株式は、経営への影響力が低いため、普通株式よりも低い価格(ディスカウントされた価格)で設定されることがあります。

種類株式の株価算定には、専門的な企業価値評価(バリュエーション)の知識が求められます。

もし合理的な根拠なく株価を決定してしまうと、他の株主との間で不公平が生じたり、税務上の問題が発生したりするリスクが非常に高くなります。
そのため、種類株式の発行を検討している場合は、自己判断で株価を決めず、必ず企業法務に詳しい弁護士や税理士、公認会計士といった専門家に相談するようにしてください。

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会社設立の株価について相談できる専門家

会社設立時の株価や資本金の決定は、単純な計算だけでなく、税務や法務といった専門的な知識が深く関わります。

自己判断で進めた結果、後から思わぬ税金が発生したり、法的な手続きで手戻りが生じたりするケースは少なくありません。

将来のトラブルを未然に防ぎ、スムーズな会社設立を実現するためには、各分野の専門家に相談することが極めて重要です。

ここでは、相談内容に応じてどの専門家を頼るべきかを具体的に解説します。

税務リスクについては税理士へ

株価の設定は、将来の税負担に直接的な影響を与えます。
特に、発起人間で出資額と株式の比率が異なったり、適正価格から著しく乖離した株価を設定したりすると、贈与税が課されるリスクが生じます。
このような税務上のリスクを回避し、最適な資金計画を立てるためには、税金の専門家である税理士への相談が不可欠です。

税理士には、株価の妥当性だけでなく、設立時の資本金の額が将来の消費税や法人税にどう影響するかといった、経営全体を見据えたアドバイスを求めることができます。
また、創業融資を検討している場合には、金融機関を納得させられる精度の高い事業計画書の作成支援も期待できるでしょう。

相談項目具体的な相談内容
適正な株価の算定発起人間の公平性を保ち、贈与税リスクを回避するための株価評価や設定に関するアドバイス。
資本金額の決定消費税の免税事業者になれるか、法人住民税の均等割の金額など、税制上のメリット・デメリットを考慮した資本金額の提案。
役員報酬のシミュレーション会社の利益計画と個人の税負担(所得税・住民税)のバランスを考慮した、適切な役員報酬額のシミュレーション。
資金調達・創業融資日本政策金融公庫などの創業融資制度を活用するための事業計画書の作成サポートや面談対策。
設立後の経理・税務会計ソフトの選定、記帳代行、決算申告など、会社設立後の税務顧問としての継続的なサポート。

会社設立はゴールではなくスタートです。設立段階から信頼できる税理士とパートナーシップを組むことで、安心して事業成長に集中できる環境を整えることができます。

登記手続きについては司法書士へ

会社を法的に設立するためには、法務局へ設立登記を申請する必要があります。
この登記手続きの専門家が司法書士です。株価や発行株式数、発行可能株式総数などを定めた「定款」の作成から、必要書類の準備、登記申請の代行まで、会社設立に関わる一連の法務手続きを正確かつスムーズに進める上で、司法書士は頼れる存在です。

特に、定款は「会社の憲法」とも呼ばれる重要な書類であり、一度作成すると変更には手間と費用がかかります。

将来の増資や事業承継も見据え、法的に不備のない、かつ自社の実態に合った定款を作成するために、司法書士の専門的なチェックを受けるメリットは非常に大きいと言えます。

税理士と司法書士は協力して会社設立をサポートすることが多く、それぞれの専門領域を理解しておくことが大切です。

項目税理士司法書士
専門分野税務・会計法務・登記
主な役割株価の税務リスク評価、資本金と税負担の関係、資金調達(融資)の相談、設立後の税務顧問定款の作成・認証、設立登記申請の代行、株式に関する法務的アドバイス、役員変更などの各種登記
相談の目的節税、税務調査対策、健全な財務基盤の構築法的に有効な会社を設立し、煩雑な手続きを円滑に進める

会社設立の手続きは自分で行うことも可能ですが、時間と労力がかかる上に、書類の不備で何度も法務局へ足を運ぶことになる可能性もあります。

本業の準備に集中するためにも、登記手続きは司法書士に依頼することを強くおすすめします。

まとめ

会社設立時の株価と発行株式数は、まず資本金額を決め、次に1株あたりの価格、最後に発行株式数を算出する3ステップで決定します。

1株あたりの価格に法的な決まりはなく、1万円や5万円が一般的です。重要なのは、創業者間の出資比率や将来の資金調達、事業承継まで見据えて設定することです。

一度決定すると変更は難しく、発起人間で株価が異なると贈与税のリスクも伴うため、慎重な判断が求められます。

不明点があれば税理士や司法書士などの専門家へ相談しましょう。

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